最近はスポーツカーでさえATの場合が多くあります。
ツインクラッチ式ATを使うクルマも多くありますが、中にはあえてトルコンATを使うメーカーも。
今回はそのトルコンATのメリットなどについてです。
トルコンATとは?
トルコンATは昔からAT車に使われているタイプのATで、トルクコンバーターと遊星歯車による変速機構を組み合わせたATです。
現代の日本においてはCVTのほうが多いですが、欧州車ではツインクラッチ式ATやトルコンATを採用したがる傾向があります。
トルコンATはステップATと呼ばれることもありますが、現代ではトルクコンバーターを使わないトルコンATもあることからステップATという呼び方のほうが正確かもしれません。
以前はトルクコンバーターのスリップがあることからスポーティさが足りないという印象の強かったトルコンATですが、現代ではクラッチによって滑りを無くす技術が進歩したためスポーツカーなどで使われる例も多くあります。
トルコンATのメリット
スムーズさとダイレクト感のバランスが良い
トルコンATの一番のメリットは、ある程度のスムーズさを確保しながらもダイレクト感のある走りになる部分です。
スムーズさではCVTが最も優れていますが、ダイレクト感という面ではイマイチな印象が強いです。
ダイレクト感という意味ではツインクラッチ式ATが良いのですが、スムーズさに欠ける面が強いのがデメリットです。
トルコンATではそこのバランスが良く、スムーズさが必要な場面ではトルクコンバーターを滑らせて使い、ダイレクト感が必要な場面ではクラッチを作動させてトルクコンバーターの滑りを無くすことでダイレクト感を実現することができます。
ツインクラッチ式AT並みの素早いシフトチェンジができる
ツインクラッチ式ATは切れがあり素早いシフトチェンジが魅力です。
古いトルコンATの場合ダラダラとした切れのないシフトチェンジになっていましたが、最新のトルコンATではツインクラッチ式AT並みに素早いシフトチェンジができます。
それでいながら、スムーズさも両立できるのですからかなり柔軟性の高いトランスミッションです。
歴史の長いトランスミッション
トルコンATはツインクラッチ式ATやCVTと比べて古くから広く使われているトランスミッションです。
構造的にも強く、歴史が長い分だけ信頼できるトランスミッションです。
渋滞などに低速走行に強い
これはトルクコンバーターを使ったCVTにおいてもメリットとなる部分ですが、トルクコンバーターを使っていることで低速時の運転がとてもしやすくなっています。
それに対してツインクラッチ式ATでは発進時にクラッチ板を使う都合上、ゆっくり発進したり発進を繰り返す場面では悪いところが顔をだします。
その点、トルクコンバーターを使ったクルマであれば低速時はトルクコンバーターを滑らすことで対応できるので渋滞など低速走行に強いのです。
坂道に強い
これもトルクコンバーターを使ったCVT車と共通の部分です。
トルクコンバーターを使ったクルマの場合、強いクリープ現象が存在します。
ツインクラッチ式ATでも半クラッチを使ってクリープ現象を作りだしている場合も多いですが、トルクコンバーターを使ったクルマのほうが強いクリープ現象となります。
この強いクリープ現象によって坂道でも安心して走行することができます。
さらに、トルクコンバーターにはトルク増幅効果という特性があります。
簡単に言ってしまえば、トルクコンバーターが滑っている状態ではエンジンから伝わる力が増幅されてタイヤに伝わる特性です。
このトルク増幅効果によって坂道を低速で走行している時にも扱いやすくなっています。
トルコンATのデメリット
ツインクラッチ式ATに比べると効率が悪い
ツインクラッチ式ATはMTと同様の構造ですから効率が良いです。
それに比べるとトルコンATの効率は若干劣ってしまいます。
CVTに比べるとエンジンの使い方が下手
CVTは無段階に変速ができるのでエンジンの効率の良いポイントをしっかり使うことができます。
それに比べるとトルコンATではエンジンの効率が良いポイントを外してしまう瞬間が発生してしまいます。
それを減らすために最近のトルコンATではギアの数がとても多いのです。
一度にシフトダウンできるギアに限りがある
トルコンATではその特性上、一度にシフトダウンできるギアに限りがあります。
例えば1段飛ばししかできないトランスミッションでは5速から一気に2速にシフトダウンしようとしても、一旦3速に入ってから2速にシフトダウンされるような形です。
これは構造上仕方のないもので、何段まで一気にシフトダウンできるのは積まれているトランスミッションによります。
CVTやツインクラッチ式ATでも一気にギアを変えるのは苦手ですが、トルコンATに比べると自由度が高いです。
減速時のシフトダウンが苦手
トルコンATの内部ではたくさんのクラッチを繋ぎ変えることでシフトチェンジを行っています。
CVTやツインクラッチ式ATに比べると変速作業が複雑で、どうしても時間がかかってしまう瞬間が存在します。
特に急減速時のシフトダウンは苦手で、時間がかかりやすいです。
シフトアップにかかる時間ではツインクラッチ式ATにも劣らない最新のトルコンATでも、急減速時のシフトダウンは苦手です。
こういった理由もあり、スポーツカーにはツインクラッチ式ATのほうが向いています。
それに対して、セダンなどのクルマの場合にはスムーズさも重視されることからトルコンATが使われます。
幅広く使えるトルコンAT
トルコンATは様々なクルマに対応できるトランスミッションです。
CVTはパワーのあるクルマに積むのは難しいですし、ツインクラッチ式ATはスムーズさが問題となります。
そういった部分をうまくバランスさせたトルコンATは市販車向けのトランスミッションとして柔軟性に優れた良いトランスミッションなのです。
特に、最近のトルコンATは非常に進歩していることから、スポーティカーに積んでも非常に優秀なトランスミッションとなりました。
明確なギアがあることで運転のしやすさも確保されていることからドライバーにとっても運転のしやすいトランスミッションですから、トルコンATは今後も多くの車種で使われるでしょう。