以前は燃費が悪いと思われていたAT車ですが、最近はカタログ値ではMT車を超えてきます。
今回はAT車の燃費が良い理由についてです。
昔のAT車の燃費が悪かったのはなぜ?
AT車は元々燃費が悪い物といわれていました。
これにはいくつか理由があります。
トルクコンバーターのスリップ
AT車は基本的にトルクコンバーターと組み合わせてありました。
トルクコンバーターはオイルでエンジンの力をタイヤに伝える構造で、直結していないのでMT車のようなエンストはしません。
しかし、オイルで伝えているので常に滑っている状態なのが欠点でした。
これを解消するためにロックアップクラッチと呼ばれるクラッチ板が付いていたのですが、ある程度の速度が出ているときに一定速度で走っている時やブレーキを踏んでいないエンジンブレーキ時だけに作動するものでMT車の燃費には届かなかったのです。
ギアが少ない
ATは3速や4速が当たり前で、多くても5速までというのが常識でした。
基本的にATはトルクコンバーターがあることからMT車のように多数のギアは必要ないとされていたのです。
トルクコンバーターにはトルク増幅効果という滑りが大きいときにエンジンの力を増幅させる効果があったためにそんな風に言われていたんですね。
しかし、ギアが少ないと速度によってはエンジン回転が高すぎる状態で走る状態が多く、様々な状態に対応できない部分が多かったのです。
従来のATの効率は良くない
従来のATはステップATやトルコンATなどと呼ばれますが、トルクコンバーターに遊星歯車の変速機構を組み合わせたものになります。
そもそもトルクコンバーターでスリップが多いことはお話しましたが、実はAT内部でも効率を落としてしまう原因があります。
遊星歯車を使ったATの変速には湿式クラッチと呼ばれるオイルに浸されたクラッチ板を多数使うのですが、ギアによって必要とされるクラッチ板の組み合わせを変えています。
必要なクラッチ板は完全に閉じた状態でオイルの影響は受けないのですが、使っていないクラッチ板の場合には間にオイルが存在することから、オイルの抵抗によってロスが発生します。
これが従来のATで効率が良くなかった理由の一つです。
現代のAT車の燃費が良い理由
トルクコンバーターのスリップが少ない
現代のAT車では昔のATよりもロックアップクラッチが作動する頻度が多いです。
つまり、トルクコンバーターを使わずに直結して走る時間が長いんですね。
そうすることでトルクコンバーターが滑ることによる燃費の低下を防げるようになったのです。
これはATの制御技術が良くなったことや、ロックアップクラッチの容量を増やせるようになったことが大きいです。
また、忘れてはいけないのはスリップロックアップという制御方法です。
これはロックアップクラッチを意図的に半クラッチ状態にすることでエンジンからの振動を逃がしてあげる制御方法で、エンジンを低回転にして走らせても不快な振動を発生させないようにすることができます。
エンジンからの振動は不快なだけではなくクルマ自体にもダメージを与えることから、スリップロックアップはAT車の低燃費化に必要不可欠な技術です。
ギアが多くなった
ギアが多くなったことで、いろいろな状況で適切なエンジン回転を保てるようになりました。
代表例がCVTです。
CVTは無段階に変速ができるのでそのタイミングでエンジンにとって最も効率の良いエンジン回転を保つことができます。
MT車よりも低いエンジン回転を保てるんですね。
しかも加速時にも一定回転を保つことで余計にエンジン回転を上げることを防げます。
また、CVT以外のATに関しても6ATや8ATが当たり前になったことで燃費が向上しています。
エンジンもまとめて制御できる
今のクルマはアクセルペダルはエンジンに繋がっていません。
アクセルペダルはあくまでスイッチで、電気信号としてエンジンコンピューターに伝えられ加速度合いをコントロールします。
今のAT車のアクセルペダルはエンジンをコントロールするものではなく、最終的にタイヤに伝わるパワーをコントロールするスイッチです。
つまり、エンジンだけではなくATもまとめて制御してアクセルペダルに合わせたパワーが発生するようにコントロールしているんですね。
ですから、アクセルペダルを踏んだ量に合わせてエンジンパワーとATをコントロールして目標のパワーを出しながらも、効率が良くなるようにエンジンとATのバランスをとることができるんです。
電子制御が鍵
ATを飛躍的に進歩させたのは電子制御技術です。
AT自体が電子制御になったことで耐久性も上がり、しかもスムーズさなども獲得したのです。
それに加えて、アクセルペダルとエンジンを電気的に繋いだスロットルバイワイヤ技術はAT車の可能性を飛躍的に広げました。
従来であればアクセルペダルとエンジンはケーブルでつながっていたので、クルマ側ではコントロールできませんでした。
それがスロットルバイワイヤによってクルマ側でもコントロールすることができるようになったことで、制御の幅が広がったのです。
こうした進化によってATの低燃費化は実現したのです。