マニュアル車は自分で操作できるのがメリットですが、それだけに操作による影響というのも大きいんです。
MT車でやってはいけないこと
- クラッチペダルをしっかり踏まずにシフト操作をする
- クラッチペダルをゆっくり操作しすぎる
- エンジン回転数をレッドゾーンに入れてしまう
- シフト操作や発進で強いショックを出す
- 走行中シフトノブに手を置いたままにする
- クラッチペダルに足を乗せたままにする
- 信号待ちでクラッチペダルを踏んだまま待つ
- 力で強引にシフト操作をする
- 速度が高い状態で1速ギアに入れる
- 半クラッチを使いすぎる
- 常に2速発進をする
- 間違ったダブルクラッチ
以上のことがMT車でやってはいけないことです。
それではそれぞれの項目について細かく解説していきます。
なぜその操作がいけないのか
クラッチペダルをしっかり踏まずにシフト操作をする
MT車はクラッチペダルを踏まなければシフト操作ができませんから、クラッチペダルを踏まずにシフト操作をしてしまうということはありません。
しかし、ここで問題になるのはシフト操作の時にクラッチペダルをどこまで踏んでいるのかということです。
クラッチペダルには床に一番近いところにも遊びが存在します。
つまり、クラッチペダルを床まで踏まなくてもクラッチの接続が切れるんですね。
そういった理由もあって人によっては床まで踏まないでシフト操作をするという方もいるんです。
確かに、基本的にきっちりとクラッチが切れていればMTを痛めたりすることはありません。
ところが人間の感覚というのはいい加減で、踏み込んだと思っていたら実際には踏み込めていない状況というのが起きてしまいます。
ちなみにクラッチが繋がり始めるポイントというのはクラッチの温度によっても微妙に変わりますし、クラッチが切れているように思えて実は微妙に切れていない領域なんていうのもあります。
クラッチが完全に切れていない状態でシフト操作をするとMT内部のシンクロナイザーリングというパーツの摩耗が進みギア鳴きの原因になってしまいますから、クラッチペダルをしっかり床まで踏むのが大切なんですね。
クラッチペダルをゆっくり操作しすぎる
クラッチペダルをゆっくり動かしてしまうとクラッチ周りのパーツに癖がついてギアが入りにくくなったり、ジャダーの原因になります。
なので、クラッチペダルを踏むときにはできるだけスパッと素早く操作することが大切です。
発進時などクラッチを繋ぐ時にはあまりに素早くクラッチペダルを動かしてしまうとガツンというショックが出てクルマに良くありません。
クラッチを繋ぐ時にはショックが出ない程度に素早く繋ぐようにしましょう。
エンジン回転数をレッドゾーンに入れてしまう
クルマのエンジン回転数にはレッドゾーンと呼ばれる領域が設定されています。
エンジン回転計(タコメーター)の赤い部分がレッドゾーンですね。
エンジンというのは回転数が高くなりすぎると負担が大きくなりすぎて壊れてしまいますから、これ以上回すと壊れるという領域をレッドゾーンとして表示しています。
ただ、今のクルマはレブリミッターというレッドゾーンに入らないようにエンジン回転数を制限する機能が付いていますから加速時にはあまり気にしなくても大丈夫です。
問題になるのはシフトダウンをした時です。
シフトダウンした時にはギアに合わせてエンジン回転数が変化しますから、シフトダウンのタイミングが早すぎるとレブリミッターが付いていてもエンジン回転数はレッドゾーンに入ってしまうんです。
エンジン回転数がレッドゾーンに入ってしまうことをオーバーレブと呼びますが、オーバーレブというのはMT車でエンジンを壊す原因の一つなので注意しましょう。
ギアチェンジや発進で強いショックを出す
クラッチ板の摩耗を減らすためにはクラッチを繋げる時に、ある程度スパッと繋ぐ必要があります。
しかし、だからと言ってショックを出してしまうようなクラッチのつなぎ方はクルマに良くありません。
基本的に衝撃というのはMT内部のギアのみならず、エンジンやクラッチにも悪影響です。
クラッチ板の摩耗を減らしたところでクラッチ板に付いているスプリングが壊れてしまえば意味がありませんし、MT本体が壊れてしまえばクラッチよりも高額な修理になってしまいます。
基本的にクラッチはショックが出ない範囲でスパッとスムーズに繋ぐのがコツです。
走行中シフトノブに手を置いたままにする
シフトノブは手の届きやすい位置にありますからどうしても手を置きたくなってしまうと思います。
MT車の場合にはシフトを繰り返すのでシフトノブに手を置いたままにしてしまうこともあるかもしれません。
そんなときにはシフトノブに手の重さをかけないように注意してください。
MT車のシフトノブは直接トランスミッションに繋がっていますから、手をシフトノブの上に置いているとMT内部のパーツが摩耗していきます。
すぐに故障につながることはありませんが、MTの寿命を縮める行為なので注意です。
基本的にシフト操作をする時以外はシフトノブから手を離すか、シフトノブに触れている時には手の重さをかけずに表面に触れるだけになるようにしましょう。
クラッチペダルに足を乗せたままにする
走行中・停止中に関わらずクラッチ操作をしないときにクラッチペダルに足を乗せておくのはMT車では良くないことです。
走行中の場合、クラッチペダルに足を乗せておくと気づかないうちにかすかに半クラッチ状態になってしまっていることがあります。
発進時のようなわかりやすい半クラッチであれば気づくのですが、パワーをかけた時にほんの少しだけ半クラッチになるような時には気づかないことが多いです。
そうするとクラッチの温度が上がってしまってクラッチが焼けてしまったり、最悪の場合クラッチが滑ってクラッチ交換が必要になってしまいます。
信号待ちでクラッチペダルを踏んだまま待つ
クラッチペダルを踏んでいる時には高速回転するクラッチのカバーにレリーズベアリングというパーツが当たっている状態です。
クラッチのカバーはエンジンが回転している限りずっと回っているものなので、クラッチペダルを踏んでいる間にはレリーズベアリングが回転を吸収している状態です。
シフト操作や発進時など短時間なら良いものの、信号待ちでずっとクラッチペダルを踏んでいるとレリーズベアリングの温度が上がっていってしまうんです。
最終的に焼き付いてしまって異音やクラッチカバーの異常摩耗につながります。
また、信号待ちだけではなく走行中についてもクラッチペダルに足を乗せているとレリーズベアリングを傷める原因になるので注意しましょう。
力で強引にシフト操作をする
基本的にシフト操作は力任せにしてはいけません。
力任せのシフト操作はシフトミスなどの原因だからです。
とはいえ条件によってはある程度は力が必要ですし、素早いギアチェンジをする時には力を抜いてシフトをするのは難しいでしょう。
ですが、普段のギアチェンジではできるだけ丁寧にギアを入れるように心がけたほうがクルマに優しい運転になります。
速度が高い状態で1速ギアに入れる
1速ギアへのシフトダウンはMTに負担のかかるシフト操作です。
自動車メーカーはシフト操作の負担を減らすためにシンクロを強化していることが多いですが、それでも負担が大きいことには変わりありません。
1速ギアに入れる時は停止時か停止寸前、もしくはダブルクラッチを使うのがよいでしょう。
半クラッチを使いすぎる
いろいろなところで言われる部分ですね。
クラッチ焼けやクラッチ滑りを防ぐために半クラッチは少なめにするように意識しましょう。
とはいえ、ショックが出るのも良くないのでスパッとクラッチを繋ぐのを意識しつつスムーズさを失わないようにしてください。
クラッチジャダーを防ぐ方法についてはこちらから。
常に2速発進をする
1速から2速へのシフト操作が苦手だったり、発進時にスムーズにいかないのが嫌で2速発進をしたくなることもあるかもしれません。
しかし、2速発進というのはクラッチ板に負担をかけてしまう行為です。
エンジンにも負担がかかりますから下り坂など発進が簡単な場面以外では2速発進は厳禁です。
ただし、軽トラックなどで荷物を積んでいないときのように1速ギアが荷物を積んだ時に合わせて設計されている場合には2速発進をしても問題ない場合もあります。
2速発進についてはこちらの記事もオススメです。
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間違ったダブルクラッチ
ダブルクラッチというのはシンクロメッシュ機構がない時代に必要だった技術ですが、今でもシンクロの負担を減らすために使われることがあります。
ダブルクラッチというのはNでクラッチを繋いでギアの回転を合わせる行為なので、エンジン回転が次のギアに近くないと意味がありません。
しかし、正しいダブルクラッチ操作を知らずにシフト操作の間にクラッチペダルを踏みなおすだけの間違ったダブルクラッチ操作をしてしまっていることがあります。
間違ったダブルクラッチはMTを壊す原因ですから、ダブルクラッチをするのであれば正しい知識を付けてから行うようにしましょう。
基本的にエンジン回転を使って次のギアにMT内部の回転を合わせる行為なので2回目のクラッチ操作の時には次に選択するギアに相当するエンジン回転数になっていないといけません。
ただ、負担を減らせれば問題ないので完璧に合わす必要もありません。
シフトアップ時にシンクロの負担を減らしたいのであれば、ダブルクラッチよりもNで一旦ってから次のギアにシフトするほうが簡単です。
心がけが故障を防ぐ
MT車の故障というのは運転手の操作が原因のものも多くあります。
MT車の場合には過度の半クラッチなど故障に繋がりやすい操作もありますから、普段から注意しておくのも大切です。
速く走らせたいときにはどうしても操作が荒くなってしまいがちです。
そんな時にも基本を意識して操作することでMTの寿命を延ばすことができるでしょう。