日本車で良く使われるCVTですが、遅いと感じてしまう原因はなんでしょうか?
CVT車が遅いのは燃費重視だから
CVT車というのは固定されたギア比がないのでアクセル全開状態では十分速いATです。
しかし、CVTの一番の目的は燃費ですから普段の走りで燃費を良くするための工夫がたくさんされています。
そうした工夫というのは加速性能とは両立しない部分もあり、そうした部分がCVTの加速性能に影響しています。
ギア比の選び方だったり細かいところが燃費重視なんですね。
CVT車が遅いと感じる時には
基本的にクルマのつくり方が原因ですから、対処法というのはあまりありません。
発進時にはスムーズにアクセルペダルを踏みこむことで感覚と加速のずれが小さくなり、その結果加速が遅いと感じてしまう場面は減るでしょう。
もし、再加速の時に遅いと感じるのであればSレンジ・BレンジやMTモードを使って事前にエンジン回転数を上げてからアクセルペダルを踏むことで対処が可能です。
燃費を重視している以上、構造として発進加速が弱い部分があるので低速時の加速力自体はどうしようもない部分です。
とはいえ、自動車メーカーも何もしていないわけではなくそうした低速時の加速を良くするために2段ATをCVTに追加したり(スズキ)、発進専用ギアを用意したり(トヨタ)、CVT自体を低速向けにして高速時用に機構を増やすこと(ダイハツ)で燃費と加速性能を両立しようと工夫しています。
燃費重視だとなぜ加速が遅くなる?
エンジン回転数が低い
CVT車で燃費を良くするためには普段からエンジン回転数を低く維持するのが大切です。
CVT車でエンジン回転計を見ていると一定速度で走っている時には1000回転前後で走っている場合が多いです。
勿論加速するためにアクセルを踏めばエンジン回転数は高くなりますが、アクセルを踏んでから実際に加速するまでにほんの少しタイミングが遅れます。
そういった細かな遅れというのがCVT車は遅いという感触に繋がります。
ギアチェンジに時間がかかる
CVTは無段変速機と呼ばれるように固定されたギア比がないのが特徴です。
とはいえ、ギアチェンジが無くなったわけではありません。
CVT車は固定されたギアがなくスムーズな代わりに、ギア比を変える時には徐々にギア比を変化させる必要があるんです。
徐々にとは言ってもそこまで遅いわけではありませんが、従来型のATに比べると若干遅いんですね。
しかも、CVTはギア比を変えるスピードが速すぎるとギア比を変えている間は加速ができなくなってしまうのでアクセル操作と実際の加速に時間差がでてしまいます。
そこでCVTはギア比の変え方を工夫することでそうならないようにしているのですが、そうするとギアチェンジのスピードが落ちてしまったりと他のデメリットが出てしまいます。
ギア比が燃費重視
CVT車というのは高速道路でも燃費が良くなるようにギア比が高速寄りに出来ています。
CVTだけで低速から高速までカバーできれば良いのですが、ギア比の幅が広すぎるとCVT自体の効率が落ちてしまうので高速よりのセッティングにしてあるんです。
そうした理由からCVTは発進加速が犠牲になっていることが多かったんですね。
トルコンが燃費重視
最近のCVT車はトルクコンバーターと組み合わされていることが多いですが、トルクコンバーター自体も燃費重視になっています。
以前はトルクコンバーターを使わずにクラッチ板を使うことで燃費を稼いでいた時もありましたが、今はトルクコンバーターが基本です。
ただ、トルクコンバーター自体も従来より燃費重視な開発をされていて、以前よりしっかりとしたロックアップクラッチが装備されています。
それによって燃費が良くなっているのですが、その代わりに発進する瞬間の加速やアクセルを踏んだ瞬間の加速などが犠牲になっているんです。
ロックアップクラッチとは?
トルクコンバーター内部に付いたクラッチ板のことです。
トルクコンバーターはオイルによってエンジンの力を伝えているのですが、その代わり燃費があまりよくありません。
トルクを増幅させる効果を持っていることから発進加速などは良くなるのですが、オイルを使っているのでだらだらとした加速になってしまうんです。
そこで登場したのがロックアップクラッチで、トルクコンバーターの中にクラッチ板を付けることで燃費を良くして加速ももっとダイレクトにしてくれるんです。
今のクルマでは発進した後すぐにロックアップクラッチを使うクルマも多く、AT車の燃費にはとても大切な装備です。
CVT車が遅いと感じたらSレンジやBレンジを使おう
発進加速に関しては何もできないのですが、走行状態から加速するときには使えるテクニックがあります。
CVT車には通常SレンジやBレンジ、MTモードのいずれかは装備されています。
それらの機能はエンジン回転数を通常より高くするために使うことができます。
常に使ってしまうとせっかくの燃費が悪くなってしまいますが、加速する一瞬手前にシフトレバーを使って切り替えることで加速前にエンジン回転数を高くしてアクセルペダルを踏んだ時のクルマの反応が良くなり加速が改善されます。
加速自体はDレンジのほうが効率よく加速できるので加速を始めたらDレンジに戻したほうが良い場合があります。
Bレンジはエンジン回転数がかなり高くなるので使える場面というのは限られるかもしれません。
進化するCVT
そうした弱点を持ったCVTですが、街中において固定されたギア比がないというのは乗り心地や燃費においてメリットの多いトランスミッションです。
特に日本メーカーはCVTを積極的に採用していたことから、CVTの悪いところを改善するために手を尽くしています。
例えばトヨタのダイレクトシフトCVTは発進専用のギアを用意することでCVT車の苦手な発進を固定ギアでカバーするような設計になっています。
ダイハツに関しては低速・中速域をCVTだけでカバーして、高速時には遊星歯車を使ったトランスミッションをCVTに組み合わせることで対応しています。
ただし、スズキもかつてはCVTに2段ATを組み合わせたものを使用していましたが、発進加速がスムーズではなかったことから最新のものでは使われなくなっています。
トヨタやダイハツのシステムが今後どうなるかはわかりませんが、制御次第でCVTの救世主になるかもしれません。