マニュアル車に久々に乗る、これからマニュアル免許を取るけれども動かし方について知りたい、今回はそんな方に向けて発進までの手順についてお話していきます。
MT車の発進で必要なこと
- エンジンをかける
- クラッチペダルを踏んでギアを1速に入れる
- サイドブレーキを解除する
- クラッチを繋ぐ
大まかに言ってしまえば、この4つの手順が必要になります。
MT車で特徴的なのはクラッチペダルの操作で、ギアに関して言えばAT車もシフトノブを操作するので手順としては同じになります。
また、エンジンをかける際にAT車であればブレーキペダルを踏み込んでエンジンをかけますが、MT車の場合にはクラッチペダルを床まで踏んでエンジンをかけることになります。
発進までの手順
- Nを確認する
- ブレーキペダルを踏む
- クラッチペダルを床まで踏み込む
- エンジンをかける
- (クラッチペダルを踏んで)ギアを1速に入れる
- アクセルペダルを踏んでエンジン回転数を高くする
- サイドブレーキを解除する
- クラッチペダルをゆっくり戻す
- クラッチペダルの動きを止める
- クラッチペダルから足を完全に離す
以上の10ステップがMT車の発進に必要です。
必ずしも必要ではない部分も含まれていますが、安全面を考えるとこの手順が良いでしょう。
N(ニュートラル)を確認する
MT車ではエンジンをかける際にNに入っていることを必ず確認するようにしましょう。
MT車ではサイドブレーキが甘かったりした時にクルマが動かないようにギアに入れたまま駐車するのが一般的です。(1速もしくはRギア)
ギアに入れたまま駐車するのは日本では行っている人が少ないのも現状ですが、ヨーロッパのようにMT車に馴染んだ国だと当たり前に行われています。
ギアを入れたまま駐車すればサイドブレーキが甘くてもクルマが動きだしてしまう可能性が低くなり安全な反面、ギアに入れたままエンジンをかけてしまってクラッチペダルから足を離したときにクルマが動きだしてしまう危険性があります。
そうした理由があるので、MT車でエンジンをかける時には必ずNに入っていることを確認するのが大切なんですね。
ただし、クラッチペダルを踏んだ状態であればギアに入れたままエンジンをかけても問題はないです。
エンジンをかける前ではなく、エンジンをかけた後にクラッチペダルから足を離す前にNに入っているのを確認しても良いでしょう。
忘れてしまうこともありますから、慣れるまではエンジンをかける前にNに入っていることを確認するほうが良いかもしれません。
ブレーキペダルを踏む
これは必ず必要ではありません。
MT車の場合にはクラッチペダルさえ踏んでいればエンジンがかかるからです。
しかし、安全のためにはブレーキペダルも踏んだ状態でエンジンをかけたほうが良いと思います。
ギアに入ったままエンジンをかけてしまい、そのままクラッチペダルから足を離してしまうとクルマが動きだしてしまう可能性があるからです。
また、雪が降った日などはMT車の場合、サイドブレーキを使わずにギアに入れるだけで駐車することがあります。
そうした時にクラッチペダルだけ踏み込んでしまえばクルマが動きだしてしまうことがあるので、ブレーキペダルも同時に踏んでおく癖を付けておくと安心でしょう。
クラッチペダルを床まで踏み込む
今のMT車にはクラッチスタートシステムというものが採用されています。
クラッチスタートシステムはクラッチペダルを床まで踏んだ時だけエンジンをかけることができるシステムです。
実はMT車ではギアに入ったままクラッチペダルを踏まずにエンジンをかけてしまうとエンジンをかけるためのモーター(セルモーター)の強い力でクルマが動きだしてしまうんです。
エンジン故障でエンジンがかからないときにクルマを動かすためのテクニックとして使えたのですが、今のクルマではクラッチスタートシステムがあるのでできません。
クラッチペダルを床まで踏んでいなければエンジンをかけることができないのでギアが入った状態でも安全にエンジンをかけることができるんですね。
割としっかりと踏み込まないとエンジンがかからないので、エンジンをかける時には床までクラッチペダルを踏むように心がけましょう。
エンジンをかける
最近のクルマではボタンを押すだけでエンジンをかけることができるクルマが多くあります。
そういったクルマではクラッチペダルを床まで踏んだままボタンを一瞬押せばエンジンがかかります。
特にテクニックは必要ありません。
金属のカギを挿して回すタイプのクルマではエンジンがかかったらすぐにカギから手を離すようにしましょう。
エンジンがかかったのにそのままカギを回し続けていると故障の原因にもなるので注意してください。
また、カギが回らなかったらハンドルロックがかかっていることがあります。
その時にはハンドルを左右に回しながらカギを回せばエンジンをかけることができます。
ギアを1速に入れる
クラッチペダルから足を離していたなら、まずはクラッチペダルを床まで踏みましょう。
MT車ではクラッチペダルを踏まないとギアに入れることはできません。
エンジンからの力がMT本体に伝わってしまうからです。
その為、MT車ではギアを入れ替えたり停止時にギアを入れる時に必ずクラッチペダルを踏む必要があります。
注意しないといけないのは必ず床までクラッチペダルを踏むことです。
多少甘く踏んでもギアが入ってしまうことがありますが、クラッチペダルをしっかり踏まずにギアを入れるとMT本体が摩耗しやすくなります。
MT本体の修理はとても高額なのでしっかりとクラッチペダルを踏み込むのが大切なんですね。
そして、できればこのタイミングですべてのギアに入れてギアの位置を確認しておきましょう。
実はギアの位置というのはクルマによって少しずつ違います。
停止時にすべてのギアに入れてみることでギアチェンジで失敗する可能性が低くなります。
また、普通車であれば1速ギア以外で発進するのは避けましょう。
2速以上のギアで発進を繰り返しているとクラッチ板が速く摩耗してクラッチ板の交換が早めに必要になってしまうことがあるんです。
そういったこともあるので発進は必ず1速ギアを使うようにしましょう。
ただし、トラックなどの場合には2速以上のギアで発進することが多々あります。
アクセルペダルを踏んでエンジン回転数を高くする
発進をするためにはある程度のエンジンパワーが必要です。
エンジンの大きいクルマであればアクセルペダルを踏まなくても発進することができますが、一般的なクルマではアクセルペダルを踏む必要があります。
また、低すぎるエンジン回転数で発進しようとすると、振動が大きくなりMT本体やクラッチ板に悪影響があるのでアクセルペダルを多少踏んであげたほうがクルマには優しいです。
アクセルペダルを踏みすぎるとクラッチ板の摩耗やクラッチ焼けの原因になることもあるので注意しましょう。
エンジンの大きさによってですが、目安として平地ではエンジン回転数を1500~2000回転程度まで上げて発進します。
軽自動車やコンパクトカーなどパワーの小さいクルマであれば2000回転前後、普通車のパワーがあるクルマ(ディーゼルエンジンや排気量の大きいクルマ)では1500~2000回転ほど回っていれば十分でしょう。
あくまで目安なので、厳密にこのエンジン回転数にする必要はありません。
エンジン回転数を意識するよりもアクセルペダルの踏み込み量に注意して、アクセルペダルが一定になるように意識したほうが上手く行きます。
エンジン回転数が3000回転以上になるような発進の仕方はクラッチ焼けの原因になるので注意してください。
それ以下であればそれほど気にしなくても平気でしょうし、3000回転以上で発進したとしても連続で何度も長い半クラッチをやらない限りはクラッチ焼けの原因になる可能性は低いでしょう。
とはいえ、クラッチ板が摩耗する原因にはなるので注意が必要です。
もしクラッチ板の減りを減らしたければエンジン回転数よりもアクセルペダルの踏み込み量に注意して、踏み込みが少なめになるようにしてください。
この時、エンジン回転数が下がりすぎてエンジンが振動してしまうような状態だとアクセルペダルの踏み込み量が少なすぎます。
エンジンの振動を起こさずにアクセルペダルの踏み込み量を減らすのが大切です。
基本的に強い加速をする時にはアクセルペダルを多く踏み、緩やかな加速をしたいときにはアクセルペダルを少なく踏むことになります。
サイドブレーキを解除する
サイドブレーキを解除するタイミングはいつでも問題ありません。
アクセルペダルを踏む前にサイドブレーキを解除しても良いのですが、路面が傾いていた時にはクルマが動きだしてしまって焦ってしまうことも。
急いで解除する必要もないのでアクセルペダルを軽く踏んでからサイドブレーキを解除しても遅くはありません。
注意すべきなのは解除を忘れた状態で走らせてしまうことです。
パワーのあるクルマならサイドブレーキがかかっていても十分に走れてしまいますから解除を忘れないようにしましょう。
クラッチペダルをゆっくり戻す
発進の際にはクラッチペダルはゆっくりと離します。
ゆっくり離すというよりはペダルをゆっくり戻すという言い方のほうがしっくりくるかもしれません。
クラッチ板はエンジンからの力を摩擦で伝えているので、クラッチペダルから足をいきなり離すと急発進したりエンストの原因になるからです。
また、クラッチペダルには遊びが存在します。
クラッチペダルを床まで踏んだ状態から徐々に戻してくると、実際にクルマが動きだすまでに少し空白が存在するんです。
その空白を意識せずに発進しようとするとクラッチペダルを徐々に戻してきているのにクルマが動かずに焦ってしまい、途中からクラッチペダルを一気に動かしてしまってエンストの原因になります。
クラッチペダルを戻し始めてもすぐにはクルマは動かないということを頭に入れて運転しましょう。
クルマが動き始める瞬間は特に丁寧にクラッチペダルを動かしましょう。
クルマが動きだす瞬間に丁寧に操作しないとギアが入りにくくなったり、クラッチトラブルの原因になるので特に丁寧に操作しましょう。
そして、クルマが動きだしても歩くくらいの速度になるまでは慎重にクラッチペダルを動かします。
歩くくらいの速度になったらクラッチの戻し方でクルマの加速を調節します。
もし前にクルマが居たりして緩やかな加速をしたいときにはクラッチペダルを少なめにクラッチペダルを戻し、強めに加速したいときにはクラッチペダルを多めに戻します。
この時、アクセルペダルをあまり踏んでいないのにクラッチペダルを戻しすぎるとエンストの原因になるので注意しましょう。
もっと強い加速をしたいときにはアクセルペダルをほんの少しだけ強く踏んでからクラッチペダルをもう少し戻すようにします。
慣れるまではアクセルペダルを一定にしたほうが安心して運転できると思います。
クラッチペダルの動きを止める
発進に慣れるまでは途中でクラッチペダルの動きを止めるようにするとエンストを防ぐことができます。
エンジン回転数がすこしずつ下がるくらいの半クラッチ状態を保つようにするとクラッチ板も減りにくくなり、半クラッチが終わったかわかりやすいのでオススメです。
慣れてきたら歩くくらいの速度になった時点でガツンというショックが出ない程度にクラッチペダルを戻してきてスパッとクラッチを繋いでしまった方がクラッチの減りが少なくなります。
ただ、この方法は慣れないと急加速したりガツンというショックが出てしまうことがあるので慣れるまではクラッチペダルの動きを止めた方が良いでしょう。
クラッチペダルから足を完全に離す
ある程度加速したらクラッチペダルから足を完全に離すようにしましょう。
クラッチペダルの上に常に足を乗せて運転しているとクラッチ焼けの原因になることがあるからです。
また、半クラッチの必要がないのにクラッチペダルを軽く踏み込んでいるとクラッチ板を無駄にすり減らすことになるので注意が必要です。
半クラッチを終わらせる目安は一度下がったエンジン回転数がもう一度上がり始めたタイミングです。
半クラッチというのはタイヤ側とエンジン側の回転数の差を合わせる行為です。
ですから半クラッチにするとエンジン回転数が下がるんですね。
そして、タイヤ側とエンジン側の回転数の差が小さくなるとエンジン回転数が上がり始めるんです。
その時には回転数の差が小さくなっているのでクラッチペダルから足を離しても大丈夫なんです。
ただし、ターボ車やエアコンの動作などによってエンジンパワーが増えてしまっていることがあります。
その時には回転数の差が大きめなのにエンジン回転数が上がってしまうんですね。
最初のうちは見分けるのは難しいと思います。
ですから、クラッチペダルから足を離すときにはゆっくりと離すようにすることが大切です。
まずはクルマの少ないところで練習を
周りにクルマが居る状況では焦ってしまって思ったように走れないことが多いです。
これから教習所に通う方なら最初は教習所の中を走るので問題はないでしょう。
ですが、すでに免許を持っていてMT車の運転経験が少ないのであれば交通量が少ない道を探して発進の練習をするようにしましょう。
出来れば坂道のない道を選んだほうが安心です。
とにかく落ち着いて行えばMT車の発進は難しくありません。
安心して運転できる場所で発進の練習をするのが苦手意識を持たずに練習するコツでしょう。