ブレーキとアクセルの踏み間違い事故とは?
クルマを止めるためにブレーキを踏もうとしたらアクセルを踏んでしまったことが原因で起きる事故の総称です。
高齢者の方だけが起こす事故と認識されていますが、実は免許取り立ての方が多い世代でも起こしやすい事故です。
踏み間違い事故の対策
対策1-ブレーキとアクセルの踏みかえ方法を見直す
踏み間違いが起きる状況では自分の感覚でブレーキペダルがあると思っていた場所が実はアクセルペダルだったということが発生しています。
その対策として、自分の感覚と実際のブレーキペダルの位置がずれないようにすればよいのです。
あなたはブレーキとアクセルはどのように踏みかえていますか?
大きくわけて二つの踏みかえ方が存在します。
- かかとをつけたままつま先だけを動かして踏みかえる方法
- かかとを浮かせて脚全体を動かして踏みかえる方法
この二つになります。
どちらの踏みかえ方が良いのでしょうか?
ずばり私は “1” の方法を推奨します。
ボールペンで文字を書くときにはペンの下のほうを持つように書くと思います。
試しに上のほうもって書くと書きにくさを感じるのではないでしょうか?
それと同様のことがペダルでも存在しています。
“1”の方法ではかかとを支点とするので、ペダルからの距離も近く指以外の部分に関節が存在しないため正確な動きになります。
“2”の方法では支点は股関節となり、ペダルからの距離が遠いです。
その為、ほんの少し力加減を間違えるだけで簡単に踏み間違いが起きるのです。
ペダルを踏みかえるときにはかかとをつけたままつま先だけで踏みかえることが重要です。
もし足のサイズが小さく踏みかえが難しい場合にはブレーキペダルの右半分を踏むようにすると良いでしょう。
こうすることで踏みかえ時につま先を動かす量も減ります。
この際、右端を踏みすぎて滑らせないように注意してください。
対策2-N(ニュートラル)レンジを使わない
あなたは駐車時にATのシフトレバーはどの位置にしていますか?
駐車時には”Nレンジ”を使わないようにしましょう。
これには以下の3つの理由が存在します。
- サイドブレーキが弱いとクルマが動き出してしまう。
- 間違ってNレンジからDレンジへ入ってしまうことがある。
- Rレンジに入れるつもりでDレンジ入れてしまうことがある。
踏み間違いで特に問題になるのは “2”と”3” です。
まず2番から見ていきましょう。
クルマの設計では、Pレンジから動かす場合にはブレーキペダルを踏み込まない限りは入らないようになっています。
Pレンジではブレーキを踏んでいない状態でギアを入れてしまうということが起こりません。
しかし、Nレンジからのシフトの場合にはブレーキを踏む必要がないのです。(BMWなど一部メーカーはブレーキを踏まないと入りません)
その為、ブレーキを踏んでいない状態でもシフトレバーに手を触れてしまうとDレンジに入ってしまう可能性があるのです。
しかもそういう状況では基本的に運転を想定してませんからペダルをすぐ踏める姿勢にはありません。
そんな状況でクルマが動いたことに驚いてブレーキを踏もうとすればアクセルペダルを間違って踏んでしまう可能性が非常に高くなります。
サイドブレーキのかけ忘れやサイドブレーキが弱かった際にNレンジでは動いてしまうことも危険性の一つです。
クルマを降りた状態からブレーキを踏もうとしてアクセルを踏んでしまうパターンもあり得るのです。
続いて”3″の解説をしていきます。
ギアなんか間違えないと思う方も多いかと思います。
しかし、NレンジとPレンジを使い分けている場合には今どちらに入っているのかわからない状況が想定されます。
例えばPレンジからバックしようとしてRレンジに入れる場合にはシフトレバーを手前に動かします。
しかし、Pレンジに入っていると思っていたのに実はNレンジに入っていたとしたら、ギアはDレンジに入ってしまうのです。
そしてペダルの踏み間違いや、輪留めを乗り越えてしまってそのまま事故になるパターンもあるのです。
こうした2つの理由からNレンジはできるだけ使うべきではないのです。
もし、どうしてもNレンジを使わなければならない理由があった場合にはNレンジからシフトする際に必ずブレーキペダルを一度踏むような癖をつけましょう。
これは “ブレーキを踏む” という動作をすることで今の姿勢でブレーキペダルの位置がどこなのかを体に覚えさせる意味があります。
対策3-ギアポジションを必ず確認する。
ギアを動かしたら必ずどのギアに入っているのか確認する。
これもとても重要です。
特に下の写真のようなトヨタや日産、ホンダなどの一部車種に使われているスイッチ式のシフトレバーでは特に重要でしょう。(写真は日産ノートE-POWER)
従来のシフトレバーであればギアを入れそこなったときというのがわかりやすいです。
しかし、スイッチ式のシフトレバーではそれがとても分かりにくいのです。
例えばDレンジからRレンジに入れようとして力が足りなくてDレンジに戻ったら手の感覚でわかりますよね。
しかしスイッチ式のシフトレバーではどのような場合でも元の位置に戻るため入っていないことに気づけません。
特にクリック感のないスイッチ式のシフトレバーには注意が必要です。
入ったかどうかが曖昧で、私自身DレンジからRレンジに入れる際にミスをして慌てた経験があります。
さらにこの形式ではNレンジに入れるためにはNレンジの位置にして一定時間待つ必要があります。
意外とこの時間が長いためNレンジに入れたつもりがDレンジやRレンジに入っていたようなことが起きます。
その為、今自分のクルマのギアがどこに入っているのか把握する癖をつけることが必要なのです。
まとめ
細かく理由を含めて紹介してきましたが、踏み間違いを防ぐ対策は以下の3つです。
- アクセルペダルとブレーキペダルの踏みかえはかかとをつけたまま行う。
- N(ニュートラル)レンジは基本的に使わないように心がける。
- シフトレバーを操作したら必ずギアの位置を確認する。
この3点は踏み間違い事故の対策としてとても有効なものだと私は考えます。
勿論物事に絶対ということはありません。
この対策をしても踏み間違いが起きる可能性はあります。
しかし、こういったことを心がけることで少なくとも踏み間違いを起こす確率は確実に減っていくでしょう。
自動車メーカーへの提言
自動車メーカーは踏み間違いの自動制御を開発するよりも先に、NレンジからDレンジへのシフトの際にブレーキを踏まなければシフトノブが動かない構造にするべきです。
この構造を持った車は私が知る限りBMWのみです。
この構造を持つクルマが増えれば悲惨な踏み間違い事故も減るでしょう。
信号待ちでNレンジを使う方からするとブレーキを踏まなくてはならないのが煩わしいという感覚もあるかもしれませんが、たった一つの行動で事故が減るならば安い代償なのではないでしょうか?
また、日産やテスラ、BMWなどが電気自動車に採用しているワンペダルドライブにも問題点があります。
これは日常の領域ではアクセルペダルを離すだけで減速ができるため踏み間違いの防止に役立つのではといわれることのある機構です。
しかし、踏み間違い事故というのは慌ててブレーキペダルを踏む状況でも発生します。
ブレーキを踏む必要がない状況ではペダルの位置を体が覚えていません。
さらに、かかとをつけて運転していても普段ブレーキを踏まないで済むのであればかかとの位置はブレーキペダルを意識したものにはならないでしょう。
そういった時にあわててブレーキを強く踏む必要があった場合、ブレーキペダルではなくアクセルペダルを踏む可能性というのは格段に増えてきます。
特に駐車をする際などに急に止まりたいと思った時に踏み間違える可能性は高くなります。
できれば10キロ以下の低速域ではこの機能が働かないような構造になるか、もしくはアクセルのみで強いブレーキまでかかる構造にするべきです。
最近の自動車メーカーの傾向として安全性などを一切無視して装備を展開していく傾向にあるように感じます。
大型化するタッチスクリーンに関しても、強い光を発するため夜間の走行を考えれば決して歓迎されるものではありません。
ユーザーの安全に対する意識にも問題があるのでしょうが、自動車メーカーは弊害に関してもしっかりと検討するべきです。
自動車はリビングではありません。
安全に対する意識の欠如は事故を招きます。
自動車メーカーには一刻も早い対策を望みます。