MT車の魅力は自分で操れる部分ですが、それだけに操作によってはクルマにダメージがあることも。

MT車で壊しやすい部分
MT車はクラッチ板とトランスミッションを手動で操作できるのが特徴です。
手動で操作ができることで楽しい反面、間違った操作をするとクルマへのダメージに繋がります。
慣れるまではどうしても操作が安定せずに知らず知らずのうちにダメージを与えてしまう操作をしてしまうことがあります。
では、MT車でダメージを与えやすい部分はどこでしょうか?
クラッチ板
MT車でよく聞くのがクラッチを焼いてしまうといったことではないでしょうか?
クラッチ板はエンジンとトランスミッションの間にあるもので、エンジンとトランスミッションの繋がりを切るための機構です。
これがあることでMT車は停止してもエンジンが止まりませんし、シフト操作をすることもできます。
ただしクラッチ板は強い摩擦を発生させるための板なので、クラッチ板を滑らせる操作”半クラッチ”を行うと発熱していきます。
クラッチ板は発熱するものなので熱に対して強い設計になっていますが、それでも過度に発熱するとクラッチ板自体がダメになってしまいます。
これが”クラッチを焼いてしまう”という現象です。
クラッチを焼いてしまうとクラッチ板が滑ってエンジン回転がタイヤに伝わらなくなったり、逆に切り離すことができなくなってシフト操作や発進をすることができなくなったりします。
また、シフト操作を間違えて高い速度で1速など低いギアに入れてしまうとクラッチ板が高速回転してはじけ飛ぶこともあります。
トランスミッション
MT車はシフトノブによってトランスミッションを手動操作することでギアを変更していきます。
そのため操作によってはトランスミッション自体を壊してしまうことも。
ただ、トランスミッションの場合にはクラッチ板とは違って操作によって即壊れてしまうようなことはあまりありません。
とはいえ全くないわけではなく、思いっきり力を入れて無理やりシフト操作をしたりクラッチペダルをしっかり踏まないでシフト操作をするとトランスミッションが壊れてしまうことも。
トランスミッションが壊れてしまうとシフト操作がしにくくなったり、異音がしたりします。
エンジン
MT車はシフト操作を行うことでエンジン回転が変化します。
逆に言えば、エンジンにダメージを与えるシフト操作もあるということです。
エンジンには許容できるエンジン回転があり、それを超えると故障してしまいます。
エンジン回転計(タコメーター)の赤色が始まる部分(レッドゾーン)がそのエンジンの許容できるエンジン回転数で、レッドゾーンに入らないように操作をしないといけません。

とはいえ自動車メーカーもそのあたりはよく考えていて、加速していったときにレッドゾーンに差し掛かるとそれ以上エンジン回転が上がらないようにするレブリミッターという機能があります。
これがあることで、通常の加速時にはあまり意識しなくてもエンジンを壊すことはありません。
ただ、MT車の場合にはシフト操作によってエンジン回転が変化するという特徴があります。
例えば、高速で走っている時に1速ギアに入れてしまえばエンジン回転は1速ギアにふさわしい回転数まで上がります。
つまり、レッドゾーンを大きく超えた回転数まで上がってしまうということですね。
この場合にはタイヤの回転がエンジンに直接伝わっていることから、レブリミッターは効果がなく簡単にエンジンを壊してしまいます。
駆動系
トランスミッションも駆動系に入りますが、ここではホイールにつながっているドライブシャフトなどトランスミッション以外の部分に関してです。
基本的に駆動系はかなり頑丈にできていますから、通常操作で壊すことはまずないでしょう。
ただ、ロケットスタートをするために高いエンジン回転数でクラッチペダルを一気に離したりすると駆動系のパーツに強い負担がかかります。
場合によっては折れたりすることも。
タイヤにつながる部分ですから折れたりしてしまえば走ることはできなくなります。
MT車を壊さないために注意すべきこと
過度に半クラッチを使わない
半クラッチを使っている時にはクラッチ板に熱が溜まっていく状態です。
クラッチ板の温度が上がりすぎると故障の原因になります。
しかし、MT車には半クラッチを使わなければいけない瞬間もたくさんありますから、半クラッチを無くすことは不可能です。
基本的には車内で強烈な異臭がしたり、アクセルを強く踏み込んで半クラッチをしないようにすればそれほど大きな問題にはなりません。
ただし、半クラッチが増えれば増えるほどクラッチは減っていきますから、無駄な半クラッチを減らすように心がけていきましょう。
また、軽い半クラッチを使いすぎると半クラッチで振動が起きる”クラッチジャダー”という現象の原因になるので、半クラッチはダラダラと続けないように意識したほうが良いでしょう。
シフト操作の時にはクラッチペダルを床まで踏む
シフト操作をする時にはクラッチペダルをしっかり踏み込むように意識しましょう。
慣れると床まで踏まなくてもクラッチ板が完全に離れるポイントが分かるようになりますが、床まで踏むようにしたほうがトランスミッションにはやさしいです。
ちなみに、半クラッチ状態でもギアを抜く(ギアからNに入れる)ことはできるのでギアが抜けるからと言ってクラッチ板が完全に離れているとは限らないので注意してください。
また、感覚ではクラッチペダルをしっかり踏んでいるつもりでもペダルを踏み切れていないことがあったりするので、床までしっかり踏むように意識するのはMT車を長持ちさせる上で重要なんですね。
クラッチペダルに足を乗せたままにしない
クラッチペダルに足を乗せて走っていると、気づかないうちにペダルを踏んでしまって半クラッチ状態で走り続けてしまうことがあります。
半クラッチ状態で走ればクラッチ板が熱で壊れてしまいますし、摩耗も激しくあっという間にクラッチ板が無くなってしまうことも。
半クラッチ状態ではないと思っていても気づかないくらい少しだけクラッチ板が滑っていることがあるので、走行中はペダルの上に足を乗せないように意識しましょう。
また、停止中にもNにいれてクラッチペダルから足を離しておくように意識してください。
これはレリーズベアリングというパーツが壊れるのを防ぐためです。
シフトダウンはエンジン回転が十分下がってから
先ほどシフトダウンではエンジンを壊す可能性があるということをお話しましたね。
サーキット走行の動画などを見ているとレーシングドライバーは減速時に素早くシフトダウンしていると思います。
しかし、彼らはどのタイミングでシフトダウンすればエンジンを壊さないかわかっているからこそできるテクニックです。
シフトダウンしたらエンジン回転がどれくらい持ち上がるのか把握しているんですね。
基本的にシフトダウンではシフトアップで変化したのと同じ分だけエンジン回転が変化しますが、シフト前のエンジン回転数によって変化する(高回転であるほど変化量が多い)のとギアによっても変化量が変わってくるのでそれをつかめるまでは余裕を持ったシフトダウンを心がけたほうが良いでしょう。
また、減速時には”早くシフトダウンを終わらせたい”という感覚が働き、エンジン回転が十分下がる前にシフトダウンをしてしまう場面があるのでエンジン回転が十分下がってからシフトダウンを行うように意識をすることが大切です。
ショック(衝撃)が出ないようにする
基本的に衝撃を感じるような操作はクルマによくありません。
すぐに壊れるほどのショックというのはよほどのことがない限り発生しませんが、日常でも意識しておくことは大切です。
繰り返しの衝撃は部品の耐久性に影響してきますから、楽しく走りたいときに壊さないためにも必要がないときにはショックを出さないように運転するほうが良いでしょう。
慣れるまではダブルクラッチなどは使わない
ダブルクラッチはMT車を労わる技術としてご存じの方も多いでしょう。
勿論正しく使えばMT車の寿命を延ばしてくれる技術ですが、正しく使えていない場合にはMT車の寿命を縮めてしまうことになってしまうのです。
慣れてない時には失敗することも多く、ダブルクラッチのような複雑な操作は特に失敗しやすくなってしまうので、MT車に慣れるまでは手を出さないようにしましょう。
また、現代のクルマでダブルクラッチが必要になる場面はまずないですので、あまり意識する必要はないかと思います。
1速へのシフトダウン時などに使える技術なので運転に慣れたら覚えておいても損はない技術でしょう。
MT車の運転は落ち着くことも大切
MT車を運転していると焦ってしまう場面も多いかと思います。
私自身たくさん経験しましたし、それが原因で失敗したこともあります。
焦れば焦るほど操作は難しくなっていきます。
基本に忠実に落ち着いて操作するようにしてください。
また、MT車は乗れば乗るほどうまくなっていきますから失敗してもあまり気にしないようにしましょう。
MT車は自在に操れれば楽しさはAT車の比ではないですから、諦めずに練習あるのみです!