下り坂でのエンジンブレーキ、どの程度使うべきなのでしょうか?
下り坂でのエンジンブレーキ
下り坂ではエンジンブレーキを使わないと危ない。
これはよく言われることですよね。
ブレーキの効きが悪くなって危ないという話を覚えている方も多いでしょう。
今回はその理屈も合わせて、どんな程度のエンジンブレーキが必要なのか解説していきます。
下り坂ではなぜエンジンブレーキを使うのか
下り坂はブレーキに過酷
平地ではブレーキにとってはあまり過酷な条件ではありません。
基本的にブレーキをかければ速度は落ちていきますし、頻度が多くても速度が低かったり弱いブレーキだったりするのでそれほど負担にはなりません。
ところが下り坂では違います。
基本的に下り坂では加速を抑えるためにブレーキをかけます。
つまり、アクセルを踏みながらブレーキをかけているのと同じ状態なんですね。
そんな状況ではブレーキをかける頻度も多く、それなりにしっかりブレーキをかける必要があります。
そういった理由で下り坂ではブレーキにとって過酷なんですね。
ブレーキは使うほど温度が上がる
ブレーキは摩擦によってクルマの速度を落とす機構です。
摩擦を使っていますから当然使えば使うほど温度が上がっていきます。
街中でもある程度は温度が上がりますが、それほど高くはなりません。
ところが、下り坂ではブレーキにとって過酷ですからぐんぐん温度が上がっていきます。
ブレーキの温度が上がると危険
今のクルマはブレーキ性能も高く普通に使っている限り安定して作動します。
普通に使っている時にはそこまで温度が上がらないからなんですね。
しかし、ブレーキの温度が上がっていくとブレーキの性能は落ちていきます。
例えば、ブレーキパッドは温度が上がっていくと固めるための樹脂が蒸発したりしてブレーキディスクとパッドの間に膜ができて効きが悪くなります。
これがフェードと言われる現象です。
他にもブレーキを作動させているオイルの温度が上がっていくとオイル内部に含まれた水分が蒸発してオイルの中に水蒸気が含まれた状態になります。
水蒸気は空気と同じく圧力がかかると縮んでしまいますからブレーキペダルを踏んでも水蒸気が圧力を吸収してしまってブレーキが効かなくなってしまいます。
これがべーパーロックと呼ばれる現象です。
つまり、ブレーキの温度が上がると効かなくなるということですね。
ブレーキの頻度を減らすために
下り坂でブレーキの温度を上げないためにはブレーキを使う頻度を減らすのが効果的です。
つまり、ブレーキ以外の手段で速度を落とせば良いということですね。
そこで登場するのがエンジンブレーキです。
エンジンブレーキはエンジン内部の抵抗によってかかるブレーキのことです。
エンジンブレーキを使ってもブレーキの温度は上がりません。
ですから、下り坂でエンジンブレーキを使えばブレーキを使う頻度が下がり、ブレーキの温度が上がりにくくなります。
つまり、下り坂でエンジンブレーキを使うのはエンジンブレーキによってブレーキの仕事を減らしてあげるため、なんですね。
どれくらいの下り坂でエンジンブレーキを使えばいい?
短い下り坂であれば使わなくて問題はありません。
基本的に下り坂でエンジンブレーキを使う目的はブレーキの温度を上げないためです。
ですから、短い下り坂であればエンジンブレーキを使わなくてもブレーキの温度はそこまで上がらないから問題はないのです。
ただし、ブレーキパッドへの負担はありますから軽いエンジンブレーキを使うことも悪くない選択でしょう。
問題になるのは峠道のような頻繁に長い区間でブレーキを使う場合です。
そういった場合にはカーブで速度を落としたりもすることからブレーキへの負担は大きいです。
使えば使うほどブレーキの温度が上がっていきますから、エンジンブレーキを使ってブレーキを使っていない時間を増やしてあげるようにしましょう。
どの程度のエンジンブレーキを使えばいい?
ブレーキは緩くても使っている限り温度は下がりにくい傾向があります。
ですから、ブレーキを踏まない時間ができるようにエンジンブレーキをかけましょう。
もし手動変速モードがあればギアを調節してブレーキを踏む頻度が減って、アクセルを踏まなくても済むようなレベルにエンジンブレーキを使いましょう。
手動変速モードがなければこまめに走行モード(B、S、Lなど)を切り替えたりしながら、適切なエンジンブレーキになるように調節しながら走行していきます。
匂いがしたら要注意
下り坂で変な匂いがし始めたらブレーキの温度が上がっている証拠です。
少しの匂いであればすぐ効かなくなるレベルではありませんが、エンジンブレーキをもっと使ってブレーキの使用頻度を減らしましょう。
匂いがする状況ではブレーキの効きも徐々に悪くなっていっていますから、いつもよりブレーキを深く踏まないと効かなくなったら要注意です。
もし強烈な匂いがしてきたり、効きが悪くなってきたらエンジンブレーキを使いつつ、安全な場所に止めてブレーキの温度が下がるまで待つのが良いでしょう。
また、サイドブレーキはリアブレーキと兼用の場合も多くあります。
止めた際、MT車だとどうしようもありませんが、AT車であればPレンジに入れて出来ればサイドブレーキは使わずに止めるようにしてください。
サイドブレーキをかけたままだとブレーキディスクの熱がパッドに伝わってそのままブレーキオイルの温度を上げてしまう原因になるからです。
坂道でもPレンジに入れておけばサイドブレーキをかけなくても基本的には大丈夫ですが、念のため乗ったままいつでもブレーキが掛けられるようにしておきましょう。
まとめ
- 短い坂ではエンジンブレーキは要らない
- エンジンブレーキはブレーキの負担を減らすために使う。
- 匂いがし始めたらエンジンブレーキを強くする。
- 強烈な匂いがしたらすぐ止めてブレーキを冷やす。