Pバルブが付いている本当の理由

市販自動車のブレーキシステムにはかつてPバルブと呼ばれるものが付いていました。

今回はPバルブが付いていた本当の理由についてです。

 

Pバルブって何?

プロポーショニングバルブのことをPバルブと呼びます。

これはブレーキが効く力を前後で変えるためのシステムです。

2000年ごろまで使われていましたが、現在ではABSの中に組み込まれたEBD機能によってもっと進んだ制御がされています。

 

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ブレーキが効く力を前後で変える理由

ブレーキをかけるとクルマの重さが前輪に移ります。

そして、前輪に移った分だけ後輪が軽くなっているんですね。

基本的に重さがかかっている前輪は路面に押し付けられることでグリップ力が上がっていますが、軽くなっている後輪は路面に押し付けられる力が弱いのでグリップ力が下がっています。

そんな時に前後で同じだけブレーキをかけてしまうと前輪はグリップ力に余裕があってタイヤが回り続けているのに、後輪だけグリップ力を使い果たしてタイヤの回転が止まってしまうことになります。

そうするとクルマが不安定になるだけではなく、ブレーキをかけても止まりにくくなってしまうんですね。

ですから、ブレーキは前輪と後輪で強さが違います。

ブレーキの強さの前輪と後輪の配分に関してはそのクルマの重量配分(前輪と後輪の重さの配分)によって違います。

つまり、後ろが重たいクルマほど後輪のブレーキを効かせることができるんですね。

 

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レーシングカーでは調整式の場合も

レーシングカーはブレーキで止まる距離を最も短くするために、ブレーキの前輪と後輪の配分を調節できるようになっている車両があります。

晴れの日と雨の日で適切な前輪と後輪の配分は変わってきますし、車両特性やドライバーの好みによっても変わってくるからです。

 

Pバルブが付いている理由

一般的に前輪と後輪にブレーキの力を分配するためにPバルブは付いていると思われています。

100%間違っているわけではないのですが、単にブレーキの力を分配するだけならPバルブなんて要らないんです。

 

Pバルブの特性

Pバルブは単純にブレーキの力を分配するわけではなく、ブレーキを踏む力がある程度の強さになるまでは前輪と後輪に同じ力でブレーキをかけます。

つまり、弱いブレーキの時には前輪と後輪それぞれに半分ずつブレーキがかかるようになっているんですね。

しかし、前輪と後輪に半分ずつブレーキがかかったままだと強いブレーキでは軽くなった後輪の回転が止まってしまいます。

そこで、Pバルブはある程度強いブレーキになると前輪と後輪のブレーキ力の配分を変えるんですね。

弱いブレーキでは前輪と後輪に同じだけブレーキをかけて、強いブレーキでは前輪に強いブレーキをかけるようにする、これがPバルブです。

 

分配するだけならPバルブは必要ない

ただ単にブレーキの力を分配するだけならブレーキの効きを前輪と後輪で変えるだけで十分です。

実際、レーシングカーなどはPバルブを使わずに前輪と後輪のブレーキの効きを変えることで調整しています。

その場合、前輪と後輪のブレーキは常に同じ割合で強くなっていきます。

例えば、全体のブレーキ力が10なら前輪が7ずつ後輪に3ずつ増えていくようなイメージです。

Pバルブが付いている車両では途中までは前輪と後輪がそれぞれ5ずつ増えていって、ある程度ブレーキが強くなると前輪に多くの力が配分されるように切り替わります。

つまり、ただ単に配分するのであればレーシングカーと同じように一定の割合にしておけば大丈夫なんですね。

 

キーワードは街乗り

クルマというのはブレーキを強くかけるほど後輪にかかる重さは軽くなっていきます。

つまり、強いブレーキほどブレーキ力の後輪への配分は少なくなる必要があるんですね。

そんな理由もあって前輪と後輪へのブレーキ力の配分はブレーキを限界までかけた時にちょうど良くなるように設計されます。

レーシングカーであればそれだけで十分ですが、市販車というのはレーシングカーとは違って街中での運転がメインですから極限の状態で運転することはまずありません。

そうすると問題になるのが前輪と後輪のブレーキの負担です。

 

ブレーキの配分に応じてブレーキが減る

ブレーキパッドはブレーキをかける強さによって減りが変わります。

当然ブレーキの配分によってもパッドの減りが変わってくるんですね。

基本的にブレーキというのは前輪が強く効くようになっていますから、ブレーキパッドも前輪が良く減っていくことになります。

  

ブレーキの配分が一定だともったいない

ところで、ブレーキの強さに応じて後輪にかかる重さが変わることはお話しましたね。

つまり、軽いブレーキでは後輪にはまだしっかりとした重さがかかっていることになります。

そんな時にブレーキの配分が常に一定だと後輪のブレーキ力を余らせることになります。

本来ならもっと使っても平気なはずの後輪ブレーキを使わずに、無駄に前輪ブレーキを減らしてしまうことになるんです。

 

そこで登場するのがPバルブ

さて、勘の鋭い方であればもうPバルブの目的は分かってしまったのではないでしょうか?

Pバルブは、街乗りの弱いブレーキで後輪のブレーキをしっかりと使い前輪ブレーキの摩耗を減らしつつも、強いブレーキでは前輪の効きを強くしてちゃんと止まれるようにしてくれる、そんな装置なんですね。

 

Pバルブの本当の意味(まとめ)

Pバルブは強いブレーキの時に後輪だけ回転が止まってしまうのを防いでくれる機能をもった装置です。

しかし、それだけならPバルブは必要ありません。

Pバルブの本来の意味は、街乗りで良く使う弱いブレーキの時に後輪のブレーキを強くすることで前輪のブレーキパッドの減りや負担を減らすことにあります。

Pバルブがあることで前輪のブレーキパッドばかり減ってしまうような状況を防ぐことができるんですね。

 

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