マニュアル車のトラブルの一つ、ギア鳴き。
今回はギア鳴きの症状や原因・対処法についてです。
ギア鳴きとは?
ギア鳴きというのはMT車でギアを入れる時にギャーやガッという大きな異音がする症状のことを言います。
ギア同士の回転数に差がある状態でギアを入れるとギア同士が当たって大きな音が出ます。
シンクロが付いていないクルマが多かったころはダブルクラッチを使ったりしてギア同士の回転数を合わせないとギア鳴きが必ず起きました。
今のクルマはシンクロが付いているので正常な状態でギア鳴きが起きることはありません。
構造的にMT車と近い構造を持った一部ATでもギア鳴きが起きることがあります。(AMTやDCTなど)
トルコンATやCVTは構造上ギア鳴きは絶対に起きません。
ギア鳴きの原因と対処法
- シンクロが付いていないギアがある
- 半クラッチの始まりの部分を使いすぎている
- Nに動かすときにシフトノブの動きが遅すぎる
- クラッチ板が離れなくなっている
シンクロが付いていないギアがある
シンクロが付いていないギアでギア鳴きが起きるのは異常ではありません。
ギア同士の回転数を合わせてくれる機構がないのでギア同士がぶつかり合ってしまうんです。
最近のクルマは前進ギアにシンクロが付いていないギアはありませんが、バックギアにシンクロがないクルマは存在します。
かなり古いクルマでは1速ギアにシンクロがないクルマも存在しています。
なお、軽自動車の場合にはRギアにシンクロがないことが多いです。
対処法
ダブルクラッチを使ったりしてギア同士の回転数を合わせるように工夫することでギア鳴きを回避できます。
ギア同士の回転数を合わせれば良いのでシフトアップの際にはNの位置で数秒待つことでダブルクラッチをしなくてもギア鳴きを回避できます。(ただし、ダブルクラッチのほうが素早くギアチェンジできます)
1速ギアやRギアにシンクロがないときはNの位置でクラッチペダルを踏んだまま3秒程度待ってからギアを入れることでギア鳴きを回避できます。
他のギアから切り替える時にはクラッチペダルを踏んだまま停止したあと、他のギアから直接1速やRギアに入れるとギア鳴きが起きません。
Nからギアを入れる時には2速ギアなどに一度入れてから1速やRギアに入れるのも一つの手です。
シンクロが摩耗して効きが弱くなっている
シンクロがないギアではギア鳴きが起きても正常ですが、シンクロが付いているギアでギア鳴きが起きるときには何かしらの異常があります。
シンクロは摩擦によってギア同士の回転数を合わせる構造です。
つまり、使えば使うほど摩耗していくので最終的にはシンクロの効きが弱くなってしまうんです。
シンクロが摩耗している時には特にシフトダウン時にギア鳴きを起こしやすく、シフトアップでもギアチェンジを素早くするとギア鳴きを起こします。
ギアチェンジの速度が速くなると必ずギア鳴きが起こるのが症状の特徴です。
基本的にいくつかのギアが同時にギア鳴きを起こすことは珍しく、一つの特定のギアだけで症状が出るのも特徴の一つでしょう。
対処法
基本的にはシンクロの摩耗が原因なので直すためには修理が必要になります。
シンクロが摩耗しているクルマでギア鳴きを避けるためにはギアチェンジをゆっくり行うようにするか、ダブルクラッチを使うのがこの症状に対しての対処法です。
ただし、後述しますがシンクロの摩耗ではなくクラッチ板の状態によってギア鳴きが起きることもあります。
その場合はクラッチ操作や半クラッチ中のアクセル操作を見直すことでギア鳴きが解消することもあります。
Nに動かすときにシフトノブの動きが遅すぎる
ギアに入っている状態からシフトノブをNに動かすときに、シフトノブをゆっくり動かしているとギア鳴きなどの原因になることがあります。
シフトフィールも重たく、渋いものとなってしまうことがありシフトノブを動かす速度というのは大きな影響があるんです。
ギアチェンジもやりにくくなり、ゴリゴリしたフィーリングになってしまう原因になることもあります。
対処法
ギアに入っている状態からN方向にシフトノブを動かすときにはシフトノブを素早く動かすように心がけましょう。
ここで大切なのはギアに入っている状態から次のギアの入り口までの部分を素早く動かすことです。
ギアチェンジの際にNで一旦止めてからギアチェンジをしている方は、今入っているギアからNまでを素早くしましょう。
次のギアまで一気に入れてしまう方は次のギアの入り口までを素早く動かすようにすると良いでしょう。
ここで大切なのは次のギアの入り口までなので、ギアが入るまで素早く動かす必要はありません。
ギアが入るまで素早く動かしてしまうとシンクロが摩耗しやすくなってしまうことがあるので必要なとき以外は避けたほうが良いでしょう。
あくまで次のギアの入り口までを素早く動かすことが大切です。
操作が原因でクラッチ板表面が荒れている
クラッチ操作の癖や半クラッチ中のアクセル操作の癖によってクラッチ板の表面が荒れてしまうことがあります。
クラッチ板が荒れているとクラッチジャダー(半クラッチ中にガタガタと車体が揺れる現象)やギアが入りにくい症状、ギア鳴きなどの症状の原因に。
クラッチ板表面の荒れが原因の場合ギアがゴリゴリする症状が出ていたり、ギア鳴きが起きてもギアチェンジの時に必ず起きるわけではなくシフトダウンだけだったりシフトアップだけだったりすることがあります。
また、一つのギアだけではなくすべてのギアがゴリゴリとしたフィーリングになっていたり、シフトダウンだけ異常に硬いなどの症状が出ることもあります。
対処法
クラッチ板が当たり始める部分(半クラッチが始まる部分)を使わないようにすること、それから半クラッチをしている時にアクセルペダルを動かしすぎず一定に保つように心がけることが大切です。
クラッチ板が当たり始める部分を使いすぎるとクラッチジャダーが起きやすくなります。
クラッチジャダーが起きていなければ問題はありませんが、常にクラッチジャダーが起きている場合にはそれによってギアの入りが悪くなっている可能性が高いです。
また、クラッチジャダーが起きていなくても半クラッチ中にアクセルペダルを細かく動かす癖がある場合にはクラッチ板の表面が荒れている可能性が高いです。
多少は動かしても大丈夫ですが、半クラッチ中にはできるだけアクセルペダルを動かす回数を減らすようにしたほうがよいでしょう。
半クラッチ中にアクセルペダルをちょこちょこ動かす癖があるなら注意しましょう。
クラッチ板が離れなくなっている
故障などによってクラッチペダルを床まで踏んでもクラッチ板が離れなくなってしまっていることがあります。
クラッチ板が離れなくなってしまっている場合、エンジンがかかっている時にギアを入れようとすると停止中にもすべてのギアで硬く、エンジンを切ればすんなりギアが入るのが特徴です。
また、シンクロが付いていないギアや摩耗して弱くなっているギアでは、停止中でさえギア鳴きがしてギアが入らなくなっているでしょう。
停止時のギアチェンジがかなり硬くなってしまっているのも特徴です。
原因としては半クラッチの使いすぎで熱によってクラッチ板が歪んでしまっていたり、クラッチペダルの動きをクラッチ板に伝える機構に不具合があったりするとこういった症状がでます。
クラッチペダルを床まで踏んでも半クラッチ状態が続く時には注意が必要です。
対処法
基本的には整備工場で修理が必要になります。
クラッチ板の表面が荒れているのとは違ってクラッチ板そのものが熱で歪んでしまっていたり、クラッチペダルの動きを伝えるパーツに不具合があったりするので適切な整備が必要になってしまいます。
この症状はトランスミッションにも負担がかかってしまい、トランスミッションの整備が必要になってしまう原因になります。
トランスミッションの整備は高額なのでできるだけ早く整備工場で適切な診断を受けるようにしましょう。
ギア関係は原因が複雑
ギアチェンジのトラブルは原因が複雑になりがちです。
ギア鳴きやギアチェンジでゴリゴリするという症状はシンクロの摩耗に関係なく、新車ですら発生することがある症状です。
新車でも製造時の不具合でシンクロが弱くなっていることもありますが、クラッチ操作やシフト操作の癖によって症状が発生することもあります。
原因を突き止めるのは簡単ではなく、MT本体を交換したりしても治るとは限らないのが難しいところです。
クラッチペダルを床まで踏んだ時に半クラッチになっていなければMT本体を壊す可能性は低いので、クラッチ板の表面状態を改善するように心がけてみるのも一つの手です。
クラッチ板の表面状態が原因であれば症状は再発するからです。
クラッチジャダーが出ていたり、半クラッチが扱いにくかったりする時には操作の癖を無くすようにしてみましょう。