
自動車の事故を防ぐ技術として自動ブレーキが話題に上がることも多いですよね。
今回はそんな自動ブレーキの現状について書いてみました。
自動ブレーキって何?
一般的に自動ブレーキと呼ばれているのは衝突被害軽減ブレーキです。
これは前方にクルマなどの障害物があるときにブレーキをかけて被害を低くする機能です。
自動運転とは違い日常でのブレーキを代わりにかけてくれる機能ではないことから注意が必要です。
自動ブレーキは何を対象にしている?
基本はすべてのメーカー共通でクルマに対しての追突事故が対象となります。
そして、それ以外にもメーカーの考え方、使っているシステムなどによって人、壁、自転車などを対象としているものがあります。
同じメーカーでも使っているシステムが違うと自動ブレーキの対象が変わります。
自動ブレーキがついていれば絶対事故にならない?
絶対はありえません。
機械ですから100%作動することはありえないのです。
勿論、システム的に作動しない条件もあり、逆光や豪雨などの条件下では作動しないメーカーも多いです。
また、自動ブレーキは事故を防ぐものではありません。
これはシステム的な限界があるからです。
たとえば、作動する速度にも上限があったりします。
自動ブレーキはあくまで事故被害を軽減するのが主目的なのです。
勿論、停止できる条件が揃えば止まりますが、絶対止まるという保証はないのが実情です。
さらに、絶対に作動させようとすれば誤作動が増え、誤作動を減らすと作動しない条件も増えるというジレンマがあります。
これは人間でも起こることで”かもしれない運転”をすれば危険に感じる場面が増え、”だろう運転”をすれば危険に感じる場面が減るのと同じです。
ある意味、クルマもヒューマンエラーを起こしているのです。
事故を防げなきゃ意味がない?
事故を起こさないことは重要です。
ですから事故を防げなければ意味がないと感じることも当然でしょう。
しかし、運転の主役はドライバーなんです。
事故を起こさないのはドライバーの役目。
でもどんなに安全運転を心がけていても人間はミスを起こします。
そのミスをリカバリーしてくれるのが自動ブレーキなどの予防安全技術です。
だからこそ、自動ブレーキシステムではブレーキがかかる前に警告音がなってドライバーに警告を行うのです。
あの警告音は”危険があるかもしれないから対処してほしい”というクルマ側からの善意のメッセージです。
大抵のメーカーではブレーキを踏めば間に合う距離で警告音を鳴らします。
それでもドライバーが自分自身でブレーキをかけなければ事故の被害を低くするためにブレーキをかけるのです。
誤作動があるみたいだけど?
これはシステム的な限界から来るものです。
クルマはカメラ、またはセンサーによって周りの状況を監視しています。
逆に言えば、クルマはそういった情報しか得られないのです。
こちらの動画をご覧ください。
私が撮ったものではありませんが、自動ブレーキの限界というものがわかりやすいと思います。
この動画の38秒あたりから問題のシーンです。
カーブに入る直前のタイミングで対向車が来ればドライバーが正面衝突を警戒することはないでしょう。
ここで起きるのは人間側はこうなるはずという結果を予測して動いているのに対して、クルマは条件を見てぶつかるかどうかを判断しているという点です。
具体的に言えば、クルマは前方に障害物がある状態とカーブに入る直前でドライバーが回避操作をしていないこと、相対速度から衝突までの時間が短いことを検知します。
それによって通常の自動ブレーキ条件に照らし合わせれば”衝突の危険性がある”という結論に至ります。
勿論こういった誤作動を減らすことはできるでしょう。
ですが、実はクルマは”かもしれない運転”と”だろう運転”のバランスをとっているのです。
自動ブレーキが完璧に”かもしれない運転”をすれば誤作動が非常に多くなるでしょう。
しかし、”だろう運転”にすれば誤作動は減るものの必要なときに作動しなくなってしまいます。
こういった状況以外にも、スバルの自動ブレーキ”アイサイト”では煙、霧、コンビニ袋に反応したという報告もあります。
これはスバル車の自動ブレーキがクルマ以外に人、自転車、壁など幅広く対応していることから発生するものです。
要するに、煙なども壁として認識してしまうということですね。
逆に、トヨタ車などはこの誤作動を避けるために壁では反応しないようになっています。
たとえば、鉄板を仕込んだ段ボールに向かって走っていくと、警告はしてくれますが自動ブレーキはかかりません。
これは”クルマ”として認識されないからです。
しかし、鉄板を仕込んだ段ボールにクルマの写真を貼れば自動ブレーキがかかるようになるのです。
このようにメーカーごとに考え方があり、誤作動を考慮してもスバルはできるだけ反応させるようにしてますし、トヨタは誤作動を嫌って警告はするけど自動ブレーキは明確にクルマとわかるときにしか作動しないようになっています。
そういった難しいバランスの上に成り立っているのが予防安全技術です。
自動ブレーキの作動条件は?
メーカーによって細かい条件は異なります。
しかし、共通しているのは”常に人間の操作を優先する”という考え方です。
具体的に言えば、ハンドルやブレーキペダル、アクセルペダルを意図的に操作している状況では作動しにくいようにできているということです。
これは誤作動を減らす目的があります。
勿論、障害物を回避している時に余計なことをして追突事故を防ぐといった意味合いもあります。
それ以外にも自車の速度が一定の範囲にないと作動しないものや、ワイパーの作動状況によってシステムが停止するものもあります。
これはシステム的に遠くが検知できなかったり、雨では作動が不安定になることからそうなっています。
こういった条件は取り扱い説明書に記載されている為必ず読むようにしてください。
作動条件は非常に複雑なことから販売ディーラーでも把握していないことがあります。
必ずご自身の目で確認することが重要です。
自動ブレーキは不要なのか?
結論を言ってしまえば自動ブレーキは必要な技術です。
人間はミスをします。
たった一度のミスが大きな事故につながるのが自動車です。
自動ブレーキがないクルマで事故につながるミスをすれば絶対に事故になります。
しかし、自動ブレーキが付いていればその一度のミスをクルマが助けてくれる可能性があるのです。
人間はミスをするからこそ、クルマの助けが必要なのです。
自動ブレーキについてのまとめ
- 人間のミスをリカバリーしてくれるのが自動ブレーキ
- 自動ブレーキの目的は事故被害の”軽減”
- 自動ブレーキ技術に”絶対”はありえない
- 誤作動の可能性はある
- 自動ブレーキが付いているなら必ず取り扱い説明書を読む