MT車のハードルの一つ、シフト操作のタイミング。
パドルシフトが付いているAT車でも悩む方はいるのではないでしょうか?
今回はシフトアップのタイミングの掴み方についてです。
悩ましいシフトアップ
シフトアップはMT車に慣れてない方の悩みの一つではないでしょうか。
最近はAT車のマニュアルモードやパドルシフトも一般的になってきてMT車に限らない悩みだと思います。
ですが、シフトアップに関して正しく理解すれば迷うことなくシフトすることができるようになります。
理由がわかればシフトアップは簡単
そもそもクルマにギアが存在するのには理由があります。
エンジンはその場面に応じて適切なエンジン回転数が変化します。
場面に応じてエンジン回転を適切な範囲に保つために行うのがギアチェンジです。
ですから、場面に応じてどういうエンジン回転を保てば良いのか理解できれば、シフトアップのタイミングに関しても理解できるでしょう。
適切なエンジン回転数
適切なエンジン回転というのは場面によって変わってきます。
燃費を重視する場面
一定速度で走っている時に燃費を重視する場面ではエンジン回転数ができるだけ低回転になるようにすると良いです。
エンジン回転数が多いということはその分エンジン内部の抵抗が増えているからです。
実際にはそこまで簡単でもないのですが、基本的にはそういう風に考えていて良いでしょう。
ただ、加速が必要な場合には最大トルクを発生するエンジン回転数の7割~8割程度のエンジン回転でアクセルを8~9割程度踏んで加速していくと最良の燃費になります。
エンジンの最大トルク発生回転数はカタログの数値から読み取ることができます。
コペンの場合、最大トルクの項目に[92Nm/3200rpm]という数字がありますが、3200rpm(回転)というのが最大トルクを発生するエンジン回転数です。
ですから、これの7~8割程度の回転数を目安に加速していくと良いです。
加速を重視する場面
これはレースのようなシーンで最大限加速したいときですね。
クルマを加速させるためにはエンジンパワーが必要です。
カタログの最大出力という項目がエンジンパワーに当たります。
コペンでは[64PS/6400rpm]と表記されています。
つまり、エンジンが6400回転の時に最大のエンジンパワーになるということになります。
ですから、6400回転をまたぐようにシフトアップしていくとパワーを最大限生かす加速になるんですね。
実際には加速が鈍くなるエンジン回転数があったりもするので、慣れてきたらそういう傾向をつかんでギアチェンジをしていくと良いでしょう。
パーツの摩耗を減らしたい場面
これは複雑すぎてどのエンジン回転数が一番摩耗が少ないということは言えません。
エンジンのパーツごとに摩耗の少ない回転数が変わってくるからです。
ですが、エンジンに良くない状態というのは存在します。
その代表例がノッキングです。
低すぎるエンジン回転数で無理やり強く加速させようとするとノッキングという現象が起こります。
よくMT車の発進に失敗してガクガクする現象のことをノッキングと呼んでいる場合がありますが、カーノックと呼ばれるものでエンジンのノッキングではありません。
エンジンのノッキングはカリカリ、チリチリという音が発生する状況で、非常に分かりにくいものだからです。
ノッキングはエンジンの燃焼状態が良くない状況のことで、どのエンジン回転数でも発生する可能性があります。
ただ、エンジンが高回転の時のノッキングに関してはエンジン設計が原因となりますのでドライバー側で出来ることはありません。
それに対して、エンジン回転が低回転で起きるノッキングはエンジン回転を上げることで回避する必要があります。
今のクルマにはノックセンサーというノッキングを回避するセンサーが付いています。
とはいえ、エンジンの1000回転~2000回転程度の低回転でアクセルを思い切り踏み込んで加速していくのはエンジンにとってよくありません。
他にも、低回転でアクセルを思い切り踏み込む状態というのはエンジンからの強い振動がクラッチやトランスミッションに伝わります。
そうした振動ですぐにクルマが壊れることはないものの、耐久性には影響してきます。
特に、加速時に車体全体がドドドと振動するようなエンジン回転数は避けて運転したほうが良いでしょう。
また、エンジン回転数が低いとその分エンジンの性能をしっかり使っていることになります。
エンジン内部で発生する熱も増えてきますからその分劣化も進みます。
そういったこともありエンジンの摩耗を減らすにはエンジン回転を低くしすぎず、加速時にもノッキングが起きないようにエンジン回転を高くする必要があります。
燃費が良くクルマに優しいシフトアップ
さて、それぞれの場面での適切なエンジン回転数を解説しましたが、現実世界ではそれぞれの項目のバランスを取ってエンジン回転をコントロールしていきます。
たとえば、一定速度で走っている時にパワーは必要がないので燃費を重視しつつも酷い振動が発生しないようにします。
そして、坂道ではそれに加えて坂道を登れるだけのパワーが発生するようにエンジン回転数を上げていきます。
また、強い加速が必要なときには十分なパワーが発生するようにシフトアップのタイミングを遅らせます。
それぞれのバランスに関してはエンジンの排気量やシリンダーの数によって変わってきますが、その状況に最適なエンジン回転数をまたぐような形でシフトアップしていくと良いでしょう。
難しければ、まずは十分なパワーが出ているかを意識したシフトアップをしていくと良いでしょう。
十分なパワーが出ていれば他のクルマを壊したりすることなく走らせることができるからです。
具体的に言えば慣れるまではアクセルの踏み込み量を全開の半分以下で走れるように意識して走ると良いでしょう。
正しいシフトアップのチェックポイント
- 十分なパワーが出ているか
- 酷い振動が出ていないか
- エンジン回転が高くなりすぎていないか
- ノッキングが発生していないか
チェックポイントにしてしまうと以上の3つになるでしょう。
この中で難しいのはエンジン回転が高くなりすぎていないかという項目で、これは燃費に直結するところです。
結局シフトアップで難しいのは燃費とのバランスのとり方なんですね。
最近のクルマでは燃費計なんかも付いていることが多いですからそれを利用するのも一つの手でしょう。
また、低いエンジン回転数で無理やり走らせることを避けることも大切ですから、振動など細かい部分も意識してみると、よりクルマに優しいギアチェンジができるようになるのではないでしょうか。