現代のクルマには必要ないとされるダブルクラッチ。
果たして意味がない行為なのか、構造の面から効果を考えてみます。
ダブルクラッチって何?
シンクロメッシュ機構が付いていないMT車でギアチェンジをするための技術です。
トランスミッション内部のギア同士の回転数を合わせることでギアチェンジが可能となります。
今のクルマにダブルクラッチは必要ない?
今のクルマにはシンクロメッシュ機構が付いていますから、普通に走るだけであれば必要のない技術です。
しかし、シンクロメッシュ機構も使えば使うほどすり減っていきます。
限界まですり減ってしまうとギア鳴きが起きてギアチェンジも難しくなってしまうのでダブルクラッチが必要になってしまうんです。
また、シフトダウンだけでもダブルクラッチを使っておくとシンクロの減りを抑えることができるので今のクルマでも有効なテクニックなんです。
シンクロメッシュ機構って?
ギアチェンジの際にトランスミッション内部のギア同士の回転数を合わせてくれる機構です。
現代のクルマではシンクロメッシュ機構があるので、ダブルクラッチなどのギア同士の回転数を合わせる技術を使わなくてもギアチェンジをすることができます。
シンクロメッシュ機構はギア同士の回転数を合わせると書いていますが、現代のMTはすべてのギアが常につながった状態になっていて接続を切り替えているだけなので正確にはクラッチ板などを含むトランスミッションの入力側シャフトの回転数を合わせます。
シンクロメッシュ機構が付いていないとどうなる?
シンクロメッシュ機構が付いていないクルマではギア同士の回転数を合わせないとギアチェンジができません。
もし回転数を合わせずにギアチェンジをしようとすると”ギャー”という音とともにギアが弾かれてギアチェンジができません。
これが”ギア鳴き”と呼ばれる現象です。
シフトアップの時には次のギアに入れる前にN(ニュートラル)でトランスミッションの回転数が落ちるまで待っていればギアチェンジができます。
ただし、シフトダウンの時には必ずダブルクラッチを使わなければ入りません。
シフトアップの時にもダブルクラッチを使うことで素早いギアチェンジが可能になります。
ダブルクラッチはどうやるの?
ギアチェンジをする際にニュートラルで一度クラッチペダルから足を離します。
この時点でエンジンとMTは繋がっているので”エンジン回転数=MTの回転数”になります。
そこで、エンジン回転数を次のギアに合わせたタイミングでクラッチペダルを踏み込んで次のギアにシフトします。
シフトアップなら次のギアに合わせたエンジン回転数になるのを待てば良いのですが、シフトダウンの時にはアクセルを踏んでエンジン回転数を上げる必要があります。
”エンジン回転数を次のギアに合わせる”というのが重要でただ2回クラッチを踏めばいいわけではないので注意しましょう。
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現代のクルマでダブルクラッチをする理由
現代のクルマでは必要のないダブルクラッチですが、全く意味のないことではありません。
シフトチェンジの回数が多いほど、シフトチェンジの時の回転差が大きいほどシンクロメッシュ機構の摩耗は進みます。
もしあなたがサーキット走行などハードな走り方をするのであれば、走行時の熱によって摩耗はさらに進みます。
そうした摩耗を抑えてくれるテクニック、それがダブルクラッチです。
勿論サーキット走行などではダブルクラッチをしている余裕はないかもしれません。
しかし、普段の運転でダブルクラッチを使うことでその分摩耗を減らしてあげることができるのです。
シフトアップに関してはシフトするときにNで一瞬待ってあげることでシンクロメッシュ機構を労わることはできますし、トランスミッション内部の抵抗によってシンクロメッシュ機構の負担は緩和されていることからそこまで神経質になる必要はありません。
しかし、シフトダウンに関してはトランスミッション内部の抵抗もシンクロメッシュ機構の負担になることからダブルクラッチを使うことで負担をかなり減らすことができます。
シンクロメッシュ機構が効いていれば回転数を完璧に合わせる必要はなく、多少でも負担を減らせれば十分なのでそこまで緻密なダブルクラッチをする必要もありません。
また、軽自動車などの低速トルクの少ないクルマではダブルクラッチを使うことで停止する前に1速に簡単に入れることができ、急な坂道など2速ではトルクが足りない時にもクラッチやクルマに優しい運転ができます。
ダブルクラッチを使えば1速へのシフトダウンも簡単なんです。
このようにダブルクラッチを使えればMT車の運転がより簡単になります。
現代のクルマでダブルクラッチをしてはいけない理由
クルマにも優しいダブルクラッチですが、現代のクルマではダブルクラッチをしてはいけないという人もいます。
これはダブルクラッチで回転数を合わせる際に逆に回転差を広げてしまうことがあるからです。
たとえば本来の回転差が1000回転のところ、正しくないダブルクラッチをしたがために回転差が2000回転になってしまうと逆効果になってしまいます。
こうした理由からダブルクラッチはしないほうが良いといわれることもあるのです。
また、ダブルクラッチに慣れていないことからクラッチを踏み込む量が甘かったり、クラッチペダル操作とシフト操作の連携を失敗すればトランスミッションに悪影響があります。
こういった理由からダブルクラッチはしないほうが良いといわれるのです。
正しいダブルクラッチは使えると良い技術
間違った操作が悪影響を与えることもあるダブルクラッチですが、使えるとMTに優しくなれる技術です。
走っている時には入りにくい1速ギアにシフトダウンするときにも役に立ちますし、古いクルマに乗らなくちゃいけないときなどにも役に立ちます。
絶対に必要というわけではありませんが、使えたら良い技術の一つでしょう。
正しいダブルクラッチに大切なこと
- 一つ一つの操作を確実に行う
- 回転数をちゃんと合わせる
- 出来ないときは無理をしない
- ダブルクラッチが有効なのはシフトアップよりシフトダウン