DCT、DSGのメリットって何?

欧州車を中心に使われているツインクラッチ式AT”DCT”。

今回はそのメリットとデメリットについて解説していきます。

 

DCTってどんなトランスミッション?

DCTはツインクラッチ式ATのことで、VWなどではDSGとも呼ばれます。

ポルシェではPDKとも呼ばれるなど各車様々な呼び方があります。

しかし、構造的にはほぼ同じで、MTのクラッチを2組に増やしてそれぞれ奇数段(1速、3速、5速など)と奇数段(2速、4速、6速など)に分けてクラッチに繋いであります。

ギアの段数は6速~9速のものまであり、クラッチ板も通常のMTと同じ乾式クラッチとオイルに浸された湿式クラッチを使うタイプなど様々です。

 

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DCTのメリット

ダイレクトな走り

通常のAT車はトルクコンバーターを使っていることから走りにダラダラとした印象が出やすいのが欠点でした。

CVTなどではトルクコンバーターを使わないものもありましたが、残念ながらダイレクトなフィーリングという意味ではCVTではどうしようもないのが欠点です、

そんな従来のAT車の欠点を解決したのがDCTで、MTと同様の構造でクラッチを2組に増やしたことからMTと同等のダイレクトさをもったトランスミッションとして、MT車が多い欧州市場のユーザーやクルマ好きの間で次世代トランスミッションとして人気を博しました。

 

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MTベースでありながらスムーズ

あまり日本では馴染みがありませんが、欧州市場では以前からMTのクラッチ操作やシフト操作を自動化したトランスミッションである”AMT”(もしくはセミATとも呼ばれる)を採用する車種がそれなりにありました。

構造自体がMTと全く同じであったため、平均スピードが速い欧州市場(=大きな加減速がメイン)において良好な燃費とダイレクトな走り、開発コストなどの面で評価された結果でしょう。

しかし、MTと構造が同じなのでギアチェンジの際に一瞬加速が途切れることがAMTの問題でした。

MT車に慣れた欧州市場なら問題はありませんでしたが、街中での走行が多く(=細かな加減速が多い)平均速度も高くはない北米市場や日本市場ではスムーズさに欠けているAMTは受け入れられなかったのです。

当然、欧州市場のユーザーの中でもAMTに乗るよりもMTに乗っていたほうが良いというユーザーは多く、AT車の普及の妨げになっていたのです。(ダイレクト感の足りないステップATやCVTは論外)

それを解決したのがDCTです。

DCTはMTと同様にクラッチ板とシンクロメッシュ機構を採用したトランスミッションを組み合わせることで今までのAT車にはないダイレクト感を実現しつつ、次のギアへのギアチェンジの際にはクラッチ板を繋ぎ変えるだけで行えることからAMTのような加速が途切れる感覚も一切ないスムーズな乗り心地を提供したのです。

 

MTより速いシフトスピード

DCTはクラッチを繋ぎ変えるだけでギアチェンジが完了することからMT車に比べて圧倒的にシフトスピード(=ギアチェンジの速さ)が速いです。

それがスムーズな走りにも繋がっているのですが、従来のAT車にはないキレのあるギアチェンジに欧州市場のユーザーや最先端のAT車として人気になりました。

その後、様々なスポーツカーにも採用され従来はMT仕様のみだった車種もDCT仕様とMT仕様を併売するようになり、最終的に世界中のスポーツカーがDCT仕様のみとなったのです。

また、シフト操作に対して反応が早いのも特徴です。

シフト操作に対しての反応という意味ではCVTも早いのですのですが、シフトスピード自体は速くないのでDCTには勝てないでしょう。

また、最近のステップATはDCT並みのシフトスピードの速さを持ちますが、急減速時など特定条件ではシフト操作に対しての反応が遅い瞬間があることからスポーツカーのトランスミッションとしてはDCTが最良です。

 

DCTのデメリット

低速走行時にスムーズさが足りない

DCTは発進にクラッチを使っている都合上、低速走行時にスムーズさが足りない場面があります。

特に、1速と2速を行き来するような状況が苦手です。

スムーズかつシームレスな走りで欧州市場のユーザーから受け入れられたDCTといえども、欧州とは違い平均速度が低い北米市場や日本市場のユーザーにとってはイマイチなのでした。

 

信頼性が低い

AMTは元々不具合を抱えやすいトランスミッションです。

一部CVT車なども不具合を抱えているのでAMTだけが特別というわけではないのですが、歴史の長いステップATに比べると信頼性が低いです。

そうした傾向はDCTになっても変わっておらず、各社少なからず問題は抱えています。

シフト操作やクラッチ操作を司るユニットであったり、クラッチ板であったりと様々です。

当然ですが今後歴史が長くなるにつれて信頼性も上がってくるでしょう。

とはいえ、クラッチ板を発進に使っている以上クラッチジャダー(半クラッチの時に車体が振動する現象)は避けて通れない問題かもしれませんが・・・。

 

クリープが弱い

発進にクラッチ板を使っていることからクリープ現象が弱いです。

発進にクラッチ板を使っているCVT車なども同様の傾向がありますが、トルクコンバーター付きATからの乗り換えだと違和感を覚えてしまいます。

また、発進時に下がってしまうこともあり、そうした面も違和感に繋がっています。

とはいえ、現代のAT車は停止中にトランスミッション内部ではN状態になっていることから坂道で下がるのはDCT車に限りませんので、DCTのデメリットと呼ぶのはふさわしくないかもしれません。

 

デメリットはあれど魅力も多い

以上のようにデメリットもあるDCTですが、メリットの部分も大きいトランスミッションです。

特に独特の走行フィールは一度乗ると手放せなくなる方も多く、欧州市場においてはステップATと共にシェアを拡大しつづけています。

スポーツカーとは相性が良く、世界中のメーカーがMT仕様を廃止したことは記憶に新しいです。

また、MTより速いシフトスピードを持ちながらMTよりもトランスミッションへの負担は少ないことや、シフト操作のミスによってエンジンを壊すことがないといったメリットもスポーツカーユーザーに受け入れられている理由です。

現代ではレーシングカーもパドルシフトを採用することが多く、マーケティング的にもスポーティなイメージを付けやすいのも理由でしょう。

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