EURO NCAPの新試験

ヨーロッパの自動車安全テスト”EURO NCAP”。

2020年の変更点がYoutubeで動画になっていたのでその話題です。

 

EURO NCAPの2020年

こちらの動画ではEURO NCAPの2020年度の変更点に関してまとめられています。(EURO NCAP公式チャンネル[英語])

変更点としては以下の通りです。

 

MPDB(Mobile Progressive Deformable Barrier )

オフセット衝突試験の新しい形式です。

従来のオフセット試験では壁に金属製の構造物を設置してそれにクルマの幅の40%をぶつける試験を行っていましたが、MPDBでは代車に金属製の構造物を設置してそれぞれ50km/hで走らせてクルマの幅の50%をぶつける試験に変わります。(動画の1分45秒あたりです)

簡単に言ってしまえば今までは対象になるクルマだけを動かしていたのが、お互いに動かして衝突させるようになったということですね。

従来では対象となるクルマに乗っている人がどの程度のけがをするかはわかりましたが、相手に与える損害というのは評価できませんでした。

それに対して、新しい試験方法のMPDBでは衝突の相手になる代車に付いたセンサーによって、衝突した相手側の損害もシミュレーションできるようになりました。

代車の重量は1400kgなので大体カローラスポーツくらいのサイズのクルマとぶつかった時と同じような状況でしょう。

重量が1400㎏以下のクルマの場合には若干厳しい試験にはなりますが、逆に環境に悪く重量が重たいことで相手の被害が大きくなるSUVなどに対しても厳しい試験になります。

標準的なファミリーカーとの衝突を想定していることから今後のクルマ造りにも影響があるかもしれませんね。

 

側面衝突試験における同乗者の保護性能の追加試験

今まで、側面からの衝突に対しての試験では運転席と後部座席のみに座った状態で運転席側から衝突される状況を想定して行われていました。

しかし、実際の状況では衝突される側と反対側に乗っている人(例えば運転席側にぶつけられたら助手席に乗っている人)のケガが大きくなることが多くあったようです。

これは衝突の衝撃によって身体が大きく動いてしまうことでケガをしたり、乗っている人同士がぶつかったりすることが原因のようです。

そういった状況に対する対応策(多くの場合には追加のエアバッグ)を組み込むメーカーも出てきたことから、2020年からは衝突される側とは反対側に座った人に対しての評価もされるようになります。

追加のエアバッグなど対応策が装備されたクルマでは通常の側面衝突試験の際に運転席と助手席両方にダミー人形を乗せて試験を行い、特に対応策が装備されていない車両に対しては従来と同じように運転席のみにダミー人形を乗せて試験を行います。(動画の2分30秒~)

また、すべての車両に対して衝突試験とは別にタイヤなどを外したボディのみの車両の運転席にダミー人形を乗せて、助手席側からぶつけられた時をシミュレーションした衝撃をボディに与えて身体の動いた量やケガの度合いを評価する項目が追加されます。(動画の2分19秒~)

 

事故発生後の対応策

Euro NCAPでは従来から事故後にドアが簡単に開けられたかどうかなど、救援活動が行いやすくなっているかどうかを評価してきました。

2020年からはそれに加えてメーカーからの情報なども評価基準にするようです。

最近の自動車はエアバッグなど火薬が使われた部分も多く、ボディ自体も硬くなっていることからレスキュー活動がスムーズにいかないことがあります。

そういった時のためにヨーロッパの自動車メーカーはエアバッグの位置やガソリンタンクの位置、ドアの補強材の位置や危険な場所を示した図面を用意していることがあります。

そういった情報が提供されている自動車に関しては評価を与えるとのこと。

また、最近採用されることが増えた事故の際の自動通報システムに対しても評価をし、事故が起きた後に自動的にブレーキをかけて多重事故を防ぐシステム”Multi-collision braking systems”に対しても評価をするようです。

 

予防安全機能の評価項目追加

以前から自動ブレーキシステムなどに対しては評価をしていたEURO NCAPですが、2020年からはさらに項目を追加するとのことです。

新たに追加される項目としてはいわゆる右直事故(右折車が直進車にぶつかる事故)を防ぐ機能(動画の3分56秒~)やバック中の歩行者に対しての自動ブレーキ機能(動画の4分02秒~)が追加されます。

また、ドライバーを監視することで居眠りや注意力の低下を警告するシステムに対しても評価を行うとのこと。

 

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進化する安全性の指標

今回、EURONCAPを取り上げた理由はMPDBが採用されたからです。

従来の試験方法においては同一重量の車両と50km/hで衝突させて自車の損害のみ考えるという限定的な試験方法でした。

確かに以前はそこまで大型のクルマは多くなく、EVのようにサイズの割に重たいクルマも少なかったことから理に適った試験方法でした。

しかし、昨今は重量が重いSUVやEVが増え大型セダンであっても重量がかなり重たいクルマも多くなっています。

現実世界ではそういった重量の重たいクルマと標準的なファミリーカーが事故を起こすことも少なくないですから、従来の試験方法では対応しきれない部分が多くなっているのです。

重量の重たいクルマと重量の軽いクルマで事故が起きれば重量の軽いクルマの被害が必ず大きくなります。

重たいクルマはそれだけで他車に対してより強い凶器になってしまうんですね。

この試験結果が大型SUVなどの評価にどの程度の影響があるのかはわかりません。

しかしSUVを含むたくさんの新型車がどんどん大きく、重たくなり続けていますから今後こういった試験方法は、より重要になってくるでしょう。

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